「日本の朝には阿部サダヲが必要だった」それでも屋村が出ていった理由〈本人コメント付き〉【あんぱん第45回レビュー】

乾パンレシピを見て
「昔どおりだ」とつぶやく

 翌日、陸軍が勝手に乾パンの材料を持ってきて、強制的に乾パンづくりを行わせようとする。屋村はしぶしぶ、レシピ通りに作り、それをのぶ(今田美桜)たちに託す。「昔どおりだ」とつぶやくので、作ったことがあるらしい。そこに彼の秘密がありそうだ。

 でも、そもそもレシピと材料があれば羽多子たちが見よう見まねで焼けるのではないかという疑問もあるのだが……。

 民江はこれで「陸軍御用達」とほくそ笑む。彼女が手を回したようで、これが「悪いようにはせんき」だったのだ。

 その晩、屋村は、大事にしている壺(ぱんの種が入っているらしい)を抱えて朝田家を去る。

 乾パンの作り方を朝田家に託して。自分は決して軍の協力はしない。その強い意思。

 気づいて追いかけようとするのぶを、釜次は「これ以上あいつを苦しめたらいかんがじゃ」と止める。このときの釜次も渋い。第45回の釜次はかっこよかった。

 さて。屋村、この10年、ふらっといなくなって戻ってきての繰り返しだったはずなので、また戻って来るのではないだろうか。秘密もまだ明かされていないし。なにより、戻って来てくれないと、名言を言う人がひとりもいなくなっちゃうよ!

「日本の朝には阿部サダヲが必要だった」それでも屋村が出ていった理由〈本人コメント付き〉【あんぱん第45回レビュー】

 では、屋村役・阿部サダヲのコメントを紹介しよう。

――『こころ』(2003年度前期)以来の朝ドラ出演になりますね。阿部さんの思う屋村草吉の人物像と、演じる上で意識していることを教えてください。 

〈阿部サダヲさん〉朝ドラは、お父さん役もできる年齢になってきたかなと思っていましたが、それとはまたちがう、風来坊のパン職人というおもしろい役をいただけて、やりがいがあるなと感じています。

 僕の想像ではありますが、草吉は何かを諦めてきて、愛情に飢えている。だからこそ、人にすごく興味がある人物なのかなと。一見冷たそうに見えますが、結局は困っている人がいると助けたくなってしまうのだと思います。とはいえ、特に前半は、なんだかよく分からない人でいたほうがいいんだろうなと思って演じていました。  

 草吉は言葉遣いが荒いので、ただの気が強い人に見えないよう、なるべくあたたかい印象に持っていけるようにしたいと思っています。釜次さん(吉田鋼太郎)との掛け合いで、ユーモアのある感じに見えるといいなと。あとは、脚本の中園さんに「ヤムさん、おもしろくしてください」と言われたので(笑)。

 暗くなるような場面も、明るくしていければと思っています。ただ、皆さんが方言に苦労されていて、僕が勝手なことをしてしまうと、急には方言が出てこなくて困らせてしまうので。そこはあまり乱すことはしないように気をつけています。