「祝言の日取りを伝えに来ました」で沈黙…北村匠海(嵩)の“崩れそうで崩れない顔”が刺さる【あんぱん第43回レビュー】『あんぱん』第43回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第43回(2025年5月28日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「嵩」は苛つく?
それとも、ほっとけない?

 嵩(北村匠海)のあまりの間の悪さに苛つく人もいる。『あさイチ』でもくら役の浅田美代子が「苛つくでしょう」と言っていた。その一方で、彼がなんだか気になりほっとけない人もいると思う。なぜなら、不器用で人生うまくいかない人は少なくないからだ。

 それにしても、のぶ(今田美桜)の最新情報をまったく知らないまま、寛(竹野内豊)の初七日が過ぎ、東京に戻るときの嵩は、あまりにもお気の毒であった。

 のぶへの思いを「卒業」と呼ぶと、千尋(中沢元紀)が「それ卒業やのうて中退やないかえ?」と鋭い。

「まあ今更伝えてもなあ」と彼ものぶのことを教えない。気を遣っているのか。自分自身もダメージを受けているからなのか。千尋の心情は万人に理解されるものではない。

 千尋は例の赤いバッグを返そうとするが、嵩は受け取らない。

 紙袋から取り出し、むき出しで! もうこんなに手垢がベタベタついてしまったようなバッグ、誰も要らないよ……、バッグが可哀想になった。