大学で文系学部出身でも医師を目指せる?

 表面的には「同じ8年」でも、「4+4」システムが特殊なのは最初の大学4年間で学んだ課程が問われないことである。極端な話、大学で文系に属していても協和医学院に入学できれば、その後4年間、同医学院で医師を目指して学ぶことができるのである。

 協和医学院関係者によると、これは米国の医学課程を参考にして作られた制度だという。簡単に言うと、大学入学時のティーンではまだ自分の道を見極められる人は少ないが、大学を卒業する頃の20代に入れば、もっと社会に対する意識も高まる。その時点で医学の道を選んでもよいではないか、という判断もあったという。

 ただし、協和医学院の入学には厳しい条件が設けられている。2019年当時つまり董医師が入学した年の募集要項は、まず申請者は前年度にQS世界大学ランキングやTHE世界大学ランキングのトップ50位大学の出身者であること、同時に大学で生物、化学、物理、数学などの科目で規定された単位を取得した者となっていた。さらに、大学での成績は満点4のうち平均3.6以上、あるいはクラスのトップ30%以内を維持し続けていること、また医学関連の副教授以上の資格を持つ人物2人以上の推薦状が必須となっていた。

本当に米コロンビア大を卒業し、「4+4」の入学要件をクリアできた?

 つまり、学部は問わないとはいっても、実際には文系大学で学んだ人にはかなり厳しい条件なのだ。董医師は「米コロンビア大学卒」と言われていたが、その後同大学傘下にあるバーナード・カレッジの経済学部出身だということが明らかになった。バーナード・カレッジの証明書はすべてコロンビア大学が発行するものの、「生粋のコロンビア大学卒ですらない」と言われている。

 さらには「経済学部で物理や化学、生物、数学の単位を取得したのか?」といった声が上がり、実際に米国で医学を学ぶ中国人留学生たちの中からは、「経済学部に在籍しながらダブル学位を目指したとしても、協和医学院が求める高得点を取るのはほぼ無理」という体験談も伝わってきた。

 ならば、彼女はいかにして「協和医学院4+4」の入学要件をクリアできたのか? ……こうして「不倫」の告発から始まったこの騒ぎは、新しい医学制度に対する懐疑を投げかけるまでに発展した。

 医療サービスを担当する国家機関、国家衛生健康委員会(以下、衛健委)は、メーデー連休に突入したにもかかわらず、5月1日に事件の調査委員会を設立した。