中学受験生がいるご家庭にとって、5月~6月は、志望校の説明会や文化祭などが目白押しの季節。わが子に本当に合う学校はどこなのかを、子どもと一緒に実際に体感し、見極めに行くチャンスです。とはいえ、ただ漫然と行くだけでは学校の真の姿は分からないもの。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、さらにはその志望校に合格するための「過去問対策」の方法までが一冊にまとった『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著)から抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介します。

【中学受験の志望校選び】大学合格実績で、ほんとうに見るべきところは?Photo: Adobe Stock

早慶上理への合格者数に騙されない!

多くの学校が、有名大学への合格実績を学校の売り物として発表しています。実際、学校選びをする際に気にかけられる方も多いのではないでしょうか。

しかし、学校のパンフレットの「大学合格者数」などを見ても、実際には、いまいちその学校の実力はつかみにくいもの。どこに注目をして見ていけばいいのでしょうか。

現在、様々な媒体で、各学校の実力を測る指標として使われているのが、「国公立大学への合格率」です。媒体ごとに、データの重み付けなどは違っていますが、大きな差はありません。

なぜ「国公立」なのか、なぜ「率」なのか。このあたりを少し詳しくご説明していきましょう。これらのデータがどのような基準で作られているかを知っておくと、それぞれの学校のデータを読み解く際に役に立つはずです。

国公立は、受験自体は一人最大3校(前期・中期・後期校)までできますが、合格は1校しかできません。

一方、私立は一人の生徒が複数の学校、学部で合格を取ることができるため、トップ集団の一部の生徒が大量に合格実績を出します。

そのため、学校の実力を測ることが難しくなります。極端に言えば、10人それぞれが早慶に受かったA校と、2人で早慶それぞれ5学部ずつ受かったB校の実力が同じになってしまうのです。国公立であれば、10校の合格は10人の合格であるため、よりその学校の実力が測りやすくなるのです。

合格者数ではなく、合格率を見るべきなのはなぜか?

「東大合格者数1位」が毎年話題となる「開成」は、他の有力校の追随を許さないわけがあります。それは在籍生徒の数です。開成は高校から100人が入学してくるため、最終卒業生数は400人近くにのぼります。この生徒数が、合格者数に寄与しているのです。

つまり、学校の実力は、合格率を見なければ意味がありません。

例えば、2024年の開成の東大合格者数(現役+浪人)は149人、聖光学院100人、灘94人でしたが、現役合格率で見ると開成29.1%、聖光学院37.55%、灘(兵庫県)32.57%となります。

首都圏の生徒の実力が見えにくくなることも

前述のように、国公立への進学率が、大学進学における学校の実力をほぼ表しているのですが、多少の例外がある場合もあります。それは首都圏の学校です。

首都圏には、早稲田大学・慶應大学・上智大学・東京理科大学(早慶上理)など有力な私立大学が多数あるため、「なんとしても国公立」という生徒が少なくなります。つまり、同じくらいの偏差値であれば、地方の国立大学でなく、自宅から通える首都圏の私立を選ぶ傾向が強くなります。

そのため、首都圏の私立中高の最難関校、難関校においては、地方の同レベルの高校よりも、国立大学への進学率が低く出る傾向があります。

また、合格者は現役が多いのか、浪人が多いのかもポイントです。

浪人時代は予備校で勉強するので、学校の力とは一概に言えません。ただし、国公立大学はバランスの取れた基礎学力をきちんと身につけておかないと、一年浪人したところで入試に太刀打ちできないので、浪人を含め、国公立大学の合格実績が高い場合は中高6年間で学力の基盤が作られたとみることができます。

*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。