
宮城野親方(元横綱・白鵬)が6月9日付で日本相撲協会を退職する。これを受けて「白鵬いじめが酷すぎる」「宮城野親方(白鵬)を退職まで追い込んだ相撲協会はおかしい」など相撲協会への批判が噴出している。なぜ宮城野親方への風当たりは厳しいのか。雑誌「相撲」の元編集者・記者で、現役時代の白鵬へのインタビュー経験もある須藤靖貴氏が明かした――。(作家 須藤靖貴)
白鵬の角界への貢献ぶりは
誰もが認めるところ
宮城野親方(元横綱・白鵬)が6月9日付で日本相撲協会を退職する。
幕内最高優勝45回、通算1187勝はともに史上最多、傑出した記録である。その大横綱が40歳で角界を去ることになった。
親方が師匠を務めた宮城野部屋は、北青鵬(元幕内)による弟弟子への暴力事件のペナルティーで昨年4月から閉鎖。宮城野親方は2階級降格と3カ月の20%報酬減額処分を受けた。
そして師匠を含め全員が伊勢ケ浜部屋へ移籍したものの、1年たっても部屋の再開のめどがつかず、11月の九州場所後に再開という案もあったものの、退職を決断したという。伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)からは「もう少し辛抱してみてはどうか」と何度も説得されたが、首を縦に振ることはなかった。
モンゴルでは40歳は特別な年齢とされている。この3月11日にその誕生日を迎え、四半世紀に及び闘ってきた土俵を降りることになったのだった。
これで、平成以降に誕生した横綱11人(現役の豊昇龍、大の里を除く)のうち6人が角界を離れることになる。
曙、貴乃花、若乃花、朝青龍、日馬富士、そして白鵬。
こうして書き連ねると事の重大さが分かる。相撲協会の看板を背負った主役が次々と消える。寂しいことではないか。
土俵での大記録にとどまらず、白鵬の角界への貢献ぶりは誰もが認めるところだろう。
校則破り常習の高校生相手でもあるまいに…
白鵬への協会の仕打ちに耳を疑った
野球賭博問題、八百長疑惑、時津風部屋の17歳力士暴行死、ドーピング問題、相撲協会元顧問の裏金疑惑等々で角界が揺れたときにも一人横綱として土俵を引っ張ってきた。東日本大震災(自身の誕生日に発生)の後には、復興支援の旗振り役を務めた。
にもかかわらず協会から冷遇されている。そんな意識が強かったという。弟子の不祥事の件でも、同じようなケースでの他の親方の処分は軽かった。これを人種差別と眉をひそめる向きもあるようだが、それは違うと思う。白鵬をモンゴル人親方だと見下す人間は協会にもいない(ちなみに、大相撲ほど公平な競技はない。レギュラー枠などなく、誰でも土俵に上がれ、勝ち越せば必ず番付が上がる)。
日本国籍を取得して年寄を襲名するときにも「誓約書」に署名させられた。その異例の報に私は耳を疑った。いったい誰がそんな案をぶちあげたのか。校則破り常習の高校生相手でもあるまいに。
とはいえ、さまざまな風当たりの強さは故なきことではない。