幻覚剤に走る米IT業界人、専門セラピストが支援Illustration: Alexandra Citrin-Safadi/WSJ

【サンフランシスコ】創業2年のテクノロジー企業の役員室でデニス・レニー氏がコーチングのグループセッションを始めると、1人の社員が遅れて部屋に入ってきた。

「時間が構成概念でしかないことはもう理解していますが、数分遅刻したことを申し訳なく思います」。社員がそう言うと、全員が笑った。

 レニー氏の「サイケデリック・インテグレーション(幻覚統合)」ミーティングはこうして始まった。これは、技術者がアヤワスカやシロシビンなどの薬物を使って経験した幻覚の意味を、しらふの状態で理解できるように手助けするセラピーで、シリコンバレーで急速に広がりつつある。

 テクノロジー業界では幻覚剤を使用する人が増えている。多くの場合、使用者には効率や潜在能力を引き出したり、人生の意味を見つけたりするという明確な目的がある。科学者や臨床医の一部は、治療抵抗性うつや心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する幻覚剤の効果も研究している。

 純粋に娯楽目的で幻覚剤を使用する技術者が、図らずも人生の意味を見失うことは珍しいことではない。幻覚がさめて、仕事の時間を見直して神についての新たな発見や生きとし生けるものとのつながりに時間を割きたいと思う人もいれば、オフィスでの単調な仕事も無意味だと気付き、退職を望む人もいる。

 サンフランシスコのベイエリアでは、サイケデリック・インテグレーションを専門とする認定心理専門家が増えている。レニー氏はその一人だ。このセラピーでは、誘導イメージ法を使って、顧客が薬物を摂取していない状態で幻覚を追体験するのを手助けしたり、夢に変化があったかを質問するなどの古典的な手法を使用したりすることがある。