写真はイメージです Photo:PIXTA
壁に貼られた1本のバナナが、9億円で落札される。にわかには信じがたいが、これが現代アートの現実だ。なぜ人は“それ”に巨額を払うのか。その裏側には、作品そのものではなく「価値を成立させる仕組み」がある。※本稿は、美術評論家の秋元雄史『芸術の価値とは何か AIが奪い尽くすからこそ、アートに“解”がある』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
バルーン・アートが140億円?
クーンズ作品が映す資本主義
現代アートの世界において、現在もっともその作品が高額で取引されるひとりが、アメリカ人作家ジェフ・クーンズです。
彼はキャリア前半から一貫して資本主義や消費文化をテーマとした作品をつくり続けており、特に動物の姿をバルーン・アートのように仕上げたステンレス製の彫刻作品で知られています。日本でも一時期前澤友作氏が所有していたことはアートコミュニティの間で話題になりました。
2019年5月にニューヨークのクリスティーズで落札された「ラビット」は約9110万ドル(約140億円)の値をつけ、存命作家のなかで過去最高額を記録しています。
彼のバルーン・アートは、そのギラギラとした光沢や風船のように膨らんだかたちが、まさにバブルそのものを象徴しているように見えます。さらに素材に着目してみると、バルーン状の犬やウサギは、一見チープな素材でつくられた無邪気なおもちゃのように見えますが、実際には中身の詰まった非常に重いステンレスからつくられています。精密に加工し、表面を鏡のように磨き上げることで、バルーンのような光沢と軽さを表現しているのです。







