「B(ぶつぶつ)・A(あれこれ)・D(だらだら)ノイズ」とは?

 私は、次の3つのノイズがあると考えている。

B……頭の中で「ああでもない、こうでもない」と「ぶつぶつ」言っている「思考ノイズ」
A……会議や打合せ、メールで「あれこれ」雑談している「組織ノイズ」
D……インターネットを「だらだら」見ることで侵入してくる「社会ノイズ」

 という3つがあり、私は「B・A・D(バッド)ノイズ」と呼んでいる。
 脳に入ってきた「B・A・Dノイズ」をいかにキャンセルできるかで、脳が「いっぱいいっぱい」の状態を防ぐことができる。

 IT環境が変化するにつれ、「B・A・Dノイズ」は急激に増加している。
 たとえば、Aの「組織ノイズ」は昔からあるノイズだが、少子高齢化時代を迎えたことでどんどん増える傾向にある。
中間管理職が増え、部下は少なくなっているから、全社員の総労働時間における会議の相対的な占有率は自動的に増えてしまうのだ。

 Dの「社会ノイズ」も、インターネットの普及により爆発的に増加した。
 プライベートはもちろん、会社のパソコンでもインターネットを見放題の人は多いだろう。仕事にまったく関係のないサイトへのアクセスを制限するなどの対策を講じている会社は少ないはずだ。ただ限界もある。
「社会ノイズ」は仕事もプライベートも関係なく、無差別に私たちを襲ってくる。
 とくに最近、携帯電話やスマホが普及。パソコンと違って持ち運びが簡単なので、気軽にインターネットに接続できる。よっていつでもどこでも「社会ノイズ」に接することになるのだ。
 そして、「社会ノイズ」の恐ろしいところは、「社会ノイズ」を吸引すればするほど、「思考ノイズ」が膨れ上がることだ。

 たとえば、誰かが書いた上司の悪口や、ダメな上司の話など、いらない知識をどんどん吸収するから、部下は上司の話を素直に聞くことができない。
「なんでそんなことをしなくてはいけないんですか」と反発したり、ごちゃごちゃ言い訳をしたりする。
 上司も「これをやったら部下に嫌われる」とか「こんなことをしたらパワハラで訴えられる」という話に過剰に反応してしまうから、部下に言いたいこと、言うべきことを言えない。
 たとえ部下や組織を変えたいという強い気持ちを持っていても、組織内の衝突を恐れてしまうものだ。当たりさわりのない言い方しかできず、なかなか部下に決断を迫れない。

 その結果、部下は目標未達成の状態に依存し続ける。
 このように、外部環境の変化により急増した「B・A・Dノイズ」は、脳の中で混ざり、化学反応を起こす。
 頭の中はノイズで引き起こされた妄想でいっぱいになり、小さなことに過剰反応する。本書で紹介している「直感の罠」のひとつ、「リスク過敏の罠」を発生させてしまうのである。