今後、生成AIが台頭した世界で
イラストレーターは生きていけるのか

――この2年ほどは生成AIの進化が著しく、文章で指定するだけでそれらしいイラストが一瞬で出力できるようになっています。いわば、“絵が描けない人でも絵が描ける”状況になりつつあるわけですが、これはイラストレーターの職業にどう影響すると思いますか?

沓名:私はむしろ、今は“手書きの時代”が来ていると感じています。生成AIが広く浸透したことで、AIに「できること」と「できないこと」がより明確になってきました。

 AIの強みは、大量に複製したり、既存の素材を組み合わせたりする作業です。でも、たとえばイラストに物語性を込めたり、キャラクターの繊細な感情を表現したり、あるいはクライアントの細かな要望に応じてニュアンスを調整したりといった、“その場で生まれる創造”には、まだまだ限界があると感じています。

沓名美和沓名美和(くつな みわ)。現代美術史家、キュレーター、ディレクター。京都芸術大学客員教授、多摩美術大学客員教授、一般社団法人 Open Art Lab 代表理事、REBIRTH ASIA 代表。多摩美術大学、韓国弘益大学大学院卒業。中国清華大学にて博士号取得。

Rella:最近ではクライアントとの契約書や発注書にAIを使用しないことが条件として明文化されているケースも多くなりました。

 また、AIにきちんと描いてもらうには、非常に具体的で丁寧な指示が必要なんです。「動きはこう」「衣装はこう」「雰囲気はこう」と、何百文字もかけて細かく伝える必要があり、さらには出力されるイラストが思い通りになるとも限りません。

 仕事となると、クライアントはAIではできないことを発注してきます。それは「コンセプトを立てる力」や、見る人を驚かせるような想像力を発揮することです。これこそイラストレーターに求められている仕事だと思います。