食券機前に行列、キャッシュレス普及すれば変わる?

 実際に、筆者の自宅近くの松屋は、食券機が1台しかなく、繁忙期にはお客が列をなしてしまうし、筆者はじっくり吟味したいので、混んでいるときには松屋ではなく、近くのすき家に入るようにしている。

 観察してみると、松屋の券売機は、マクドナルドのセルフオーダーレジよりも現金を扱うためか、サイズが大きい。

 もう一段階、日本社会がキャッシュレスとなれば今のスペースでも2つのセルフオーダーレジを置くことができるようになるのだろうが、まだ客がついてきていないと言うことなのだろう。

 吉野家・すき家ではこの問題に対し、複数のタブレットをテーブルに設置している。操作に不慣れな高齢者層に向けては、スタッフが適宜サポートする体制も取り入れている。

 これは、単に機械を導入するのではなく、顧客の行動心理に寄り添った設計思想の表れである。すなわち、タブレットの機能性と人的サポートの融合により、店舗全体の顧客対応力を底上げする取り組みが進められている。

吉野家と松屋、店内を見れば一発でわかる「大きな違い」玉子2個は贅沢でテンションも上がるPhoto:Diamond

 牛丼屋のタブレットは、牛丼特盛にポテトサラダと卵2個を組み合わせるような注文を、誰にも遠慮せず当たり前に行えるようにした。

 客自身も気づいていなかった小さな抑制や恥じらいを消し去り、欲望に忠実な選択を可能にしたことこそが、デジタル化の最大の成果である。