
ユニクロを展開するファーストリテイリングの最新の決算(2025年8月期上期)によると、売上収益1兆7901億円、営業利益3042億円で、上期として過去最高の業績を記録した。好調の背景にあるのは、創業者・柳井正氏の「業績に徹底してこだわる経営姿勢」だ。しかし、その姿勢は賞賛されることばかりではなく、周りが震える「怖い話」もある。(イトモス研究所所長 小倉健一)
柳井正の経営姿勢あってのユニクロだが…
ファーストリテイリングの業績が好調だ。国内ユニクロ事業の売上収益は5415億円で前年より11.6%増え、営業利益は976億円で前年より26.4%増加した。商品の値引きを抑え、人件費や店舗賃料の管理を徹底したことで、利益率が上がったという 。
さらに、海外でも成長が続いている。海外ユニクロ事業の売上収益は1兆141億円で、営業利益は1685億円。どちらの増加率も前年より2桁の成長である。とくに東南アジア、欧州、北米での業績が大きく伸びている。欧州では出店が成功し、ネット販売と合わせて売上が伸びた。
なお、全体の粗利益率は53.3%。販管費の比率は36.5%で前年よりも増加している。数字からも、無駄のない経営ぶりが見えてくる。
こうした結果は、偶然や一時的な運だけでは生まれない。代表取締役会長兼社長の柳井正氏が掲げてきた「数字で語る経営」があってこそである。

実際の現場では、SKU(在庫の品目単位)ごとの売れ行きや回転率を細かく管理している。人が働いた時間と売上を比べる「人時生産性」も重要な数字として使われている 。
また、丹原崇宏グループ執行役員CIOが4月の質疑応答で「計画するだけはなく、失敗も含めて、繰り返し実行し、できるまでやり切ることを重視しています」と語っていることからも、業績にこだわる同社の姿勢が垣間見える。
働きやすさや見た目のやさしさを強調する企業が増えているなかで、柳井氏のように結果を見て動く経営者は、いまでは少数派になった。それでも、ユニクロは世界で売れている。その理由は、やはり業績を最優先する姿勢にあるのであろう。
けれど、「業績重視」は、果たして良いことなのだろうか。賞賛すべき信念なのか。それとも危ういこだわりなのか。その答えを探るには、柳井氏の過去を振り返る必要がある。