
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第63回(2025年6月25日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
御免与町に
戻ってきた嵩
「このご時世、おなごの働き口はないで」
蘭子(河合優実)がつぶやいた。戦争が終わって戦地から男性たちが戻ってきて、職場に復帰するため女性の仕事がなくなっていく。
戦争中は銃後の守りと張り切らされて、戦後はまた家に逆戻り。朝田家の女性3人は大量の洗濯物を畳みながら世間話をする。さらりと描いているけれど、世の中の勝手なところを指摘している場面であった。
波多子(江口のりこ)は嵩(北村匠海)が戻ってきたと言い、メイコ(原菜乃華)はのぶ(今田美桜)のことを気にかける。メイコはのぶと嵩の関係を好意的に見ている。メイコの言葉を静かに聞いている波多子の白髪はずいぶん増えた。年齢的なものもあるだろうけれど戦争の苦労もきっと関係しているだろう。
御免与町に戻ってきた嵩。思い出のシーソーの広場にやってくる。シーソーは戦争を経てもそのまま残っていた。「もういっぺんシーソーに乗りたい」と言っていた千尋(中沢元紀)を思い出す。
それから嵩は高知に向かう。
焼け野原が広がっている。
そこに、のぶがいた。
のぶと嵩は4年ぶりに再会する。