
PHOTO: EDWARD BERTHELOT/GETTY IMAGES, ERIC HELGAS FOR WSJ
仏シャネルは、競合エルメスの看板商品である高級ハンドバッグ「バーキン」と真っ向勝負することの難しさを実感している。一方、はるかに小規模な米高級ブランド、ザ・ロウはより有力なライバルとなりつつある。
フランスを代表する高級ブランド2社は2018年以降、ほぼ足並みをそろえて成長してきた。だが昨年、異変が起きた。シャネルは非上場企業だが最近は年次決算を発表しており、2024年の売上高が4%減少し、営業利益は3分の1近く減ったことを明らかにした。これに対し、エルメスは昨年の売上高が15%増、営業利益は9%増だった。
シャネルは上場企業のエルメスほど多くの財務情報を開示しておらず、何が起きているのかを正確に知るのは難しい。高級品に対する需要は世界的に減速している。だが、シャネルは競合他社のパフォーマンスを下回っている。一説には、同社のハンドバッグ価格引き上げが急激すぎたのではないかとの見方がある。新型コロナウイルス下ではそれが売上高の伸びを支えたが、足元では顧客離れが進んでいる。
シャネル製品で認知度の高いキルティングを施した「クラシックフラップ」バッグは、高級品の異例の値上げペースを象徴する存在となっている。米国では現在このバッグに1万0800ドル(約158万円)払う必要がある。2019年の5800ドルから大幅に上昇した。
シャネルは原材料費高騰のため値上げせざるを得なかったと説明する。だが86%もの値上げ幅は、同じ期間の全体的なインフレ率をはるかに上回り、高級品業界全体の平均をも上回っている。もしシャネルの値上げ幅がインフレ率に沿っていたら、このバッグの現在の価格は7400ドルだったはずだ。