イランだけではない、石油カードは米国にもPhoto:NurPhoto/gettyimages

 米国のイラン空爆を受けて原油市場が動揺する中、投資家は最悪のシナリオの検証を急ぐ。世界のエネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡をイランが封鎖するというシナリオだ。封鎖が現実になれば、原油価格は1バレル=100ドルを突破する可能性がある。

 だが、封鎖すれば主要な原油輸出国であるイラン自身も大きな痛手を負う上、米国を軍事以外の面でもさらに深く紛争に引き込みかねない。

 米国にはフラッキング(水圧破砕法による石油採掘)という秘密兵器があるからだ。

 ドナルド・トランプ米大統領がイランの核関連施設を爆撃するかどうかを決断する際に何を考えていたにせよ、経済面の計算は比較的容易だったはずだ。米国のエネルギー生産量が大幅に増えているためで、紛争拡大で消費者や投資家が感じる痛みはかなり軽減される。

 イラン革命が始まり第2次石油危機の種がまかれる直前の1977年、米国の石油・石油製品の純輸入量は約31億バレルで、1人当たり14バレルだった。この数字はイラク戦争が始まった2003年になっても変わらなかった。米国はいずれの時期も天然ガスの主要輸入国だった。

 現在はフラッキングのおかげで、1人当たり約2.5バレルの純輸出国となり、液化天然ガス(LNG)の世界最大の輸出国でもある。フラッキングは新しい技術ではないものの、この15年間の技術の向上により劇的な変化がもたらされた。

 仮にイランが石油やガスの供給を遮断するような措置を取っても米国や世界が打撃を受けにくくなったのは、フラッキング特有の経済性による。商品(コモディティー)トレーダーの古い格言に「高値は高値で治る」がある。