個人投資家の間で話題を呼ぶ1冊がある。『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』だ。株で勝つための考え方をストーリー形式でやさしく解説し、「本当に知りたかったことが書かれている!」と絶賛の声が尽きない。著者は、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏。稼いでいる個人投資家は、どんな指標を見て銘柄を選んでいるのか? 本記事では、栫井氏に「株を買う前に必ずチェックすべき指標」について詳しく聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

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ROEは「企業の成長スピード」

―― 銘柄を選ぶ際に、どんな指標を重視していますか?

栫井駿介氏(以下、栫井):まず第一に見るのはROEです。

 ROEとは、「純利益÷純資産」で算出される指標で、自己資本がどれだけのスピードで成長しているかを表します。

※ROE:自己資本利益率
ROE=当期純利益÷純資産(自己資本)

 たとえば、ROEが10%であれば、企業の純資産が毎年10%ずつ増えていく計算です。

 株価を一度脇に置いて考えると、ROEの分だけ、毎年企業の価値が大きくなっていくと言えるので、特に長期投資では、ROEが非常に重要な意味を持ちます。

長期にわたってROEが高ければ、稼ぐ力がある

―― ROEは、どのような基準で見ればいいのでしょうか?

栫井:基本的には、ROEは高いほどいいと言えますが、企業規模が大きくなるほど、ROEは自然と低下する傾向にあります。

 したがって、企業が成長して規模が大きくなるほど、同じ割合で利益を出すのは難しくなってきます。

 たとえば、1000万円を出資して設立した創業間もない企業が、500万円を稼ぐのは比較的容易かもしれません。

 この場合、ROEは50%となります。

 ですが、純資産が1兆円ある企業が5000億円を稼ぐのは、相当大変なこと。

 ちなみに、現実に純資産が1兆円前後で超優良な企業に東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドがありますが、純利益は1200億円程度(ROEは約12%)です。

 高いROEを維持したまま成長できるほどの「美味しい市場」は、そうそう存在しないのです。

 逆に言えば、規模が大きくなり純資産が増えていっても、一定以上の水準でROEを出し続けている企業があれば、稼ぐ力が非常に強い企業だと判断できます。

―― 「いまROEが高い企業が将来も高いROEを維持できるかどうか」については、どのように判断すればよいのでしょうか?

栫井:まずは、定量的な基準として、トラックレコードを確認します。

 過去10年間にわたって高いROEを維持してきた企業であれば、今後も大きく崩れる可能性は低いと考えられます。

 もちろんそれで断定できるわけではありませんが、少なくともトラックレコードがほとんどない企業と比べると確実性は高いです。

 そのうえで、「なぜこの企業は高いROEを維持できているのか?」という定性的な分析も加えることで、今後の見通しをより確かなものにしていきます。

 まずは定量的にふるいにかけて、定性的に補完する。そんなプロセスです。