買った途端に株が急落――そんな経験をしたことはないだろうか。パニックになって売却して後悔したり、「そのうち戻るはず」と含み損を抱えたまま動けなくなることも多い。株式投資で本当に利益を出している人は、こうした局面でどう判断し、どう行動しているのか。話題の新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』では、投資系YouTuber・栫井駿介氏が、勝てる個人投資家の思考法を解説している。本記事では、業績を見る際に初心者が注目すべき指標として、EPSとROEに焦点を当てた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

EPSとROEは必ずチェックせよ
―― 業績を判断する際に、初心者は何を見ればよいのでしょうか?
栫井駿介(以下、栫井):株式投資を始めたばかりの初心者でも、必ずチェックしてほしい指標が2つあります。
① EPSが伸びていること
② ROEが高いこと(特に10%以上が目安)
※EPS:1株当たり純利益
EPS=当期純利益÷発行済株式数
※ROE: 自己資本利益率
ROE=当期純利益÷自己資本(純資産)
EPSは「投資家にとっての利益」
―― EPSは、なぜ重要なのですか?
栫井:営業利益や純利益を見ることも悪くはありませんが、EPSのほうが、投資家の視点から見て最も正確な利益の指標です。
たとえば営業利益の場合、親会社の取り分など、純粋に投資家に帰属しない利益が含まれるケースがあります。
純利益の場合、増資などで発行株数が増えた場合、1株あたりの利益は薄まってしまいます。反対に、純利益が変わらなくても自社株買いを実施すれば、EPSは上がります。
EPSはこのような影響を反映しているので、投資家にとって最も実質的な指標と言えます。
―― EPSは他社と比較してチェックするべきですか? それともその企業単体で見ればいいのでしょうか?
栫井:競争力を測るために他社と比較するのも一つの方法ですが、基本的には、その企業のEPSの推移をチェックしていればいいと思います。
例えば、過去10年にわたってEPSが伸び続けている企業であれば、ほぼ間違いなく良い企業だと判断できます。
ROEは「企業の利回り」
―― ROEを重視する理由は何ですか?
栫井:簡単に言えば、ROEは利回りです。
企業が自己資本をどれだけ効率的に使って利益を出しているかを示す指標です。
ROEを10%で維持している会社であれば、自己資本が年率10%の複利で増えていく計算になります。
つまり、ROEが高い企業は、時間が経つほど自己資本がどんどん大きくなり、企業価値も高まっていくわけです。
―― ROEが伸びている企業は、それだけビジネスが好調ということですか?
栫井:ROEが高いのは好材料ですが、長期にわたって高いROEを維持するのは難しいです。
特に大企業の場合、自己資本が大きいため、ROEを高く保つのは簡単ではありません。
自己資本が増えるにつれて、分母が増えるので(ROE=当期純利益÷自己資本)、ROEは自然と低下していく傾向にあります。
また、ROEが非常に高いということは、「おいしいビジネスをしている」という証拠ですが、そんなビジネスが放置され続けるわけはないので、高いROEは長くは続きません。
ROEは最終的にどの企業も横並びに近づいていく傾向があります。ですので、安定して10%を維持している企業であれば、かなり良い企業だと判断していいでしょう。