高収益で成長し続けるオービック(4684)

―― ROEが高い企業というのは、具体的にはどんな企業でしょうか?

栫井:例えば、オービック(4684)です。

 2013年3月期決算から直近まで、ROEは概ね12~16%の間で推移しています。

 ROEは下がるどころか、上昇しているようにも見えます。

 先ほど話したように、企業の規模を拡大させながら、ROEを維持・向上させているのは非常に優秀な証拠です。

 オービックは、パッケージ型ERP(統合基幹業務システム)を開発、販売している会社です。

 一度システムが導入されると、他社に乗り換えにくく、継続的な顧客を増やしながらも、固定費を抑えたまま売上を伸ばせるビジネスモデルなんです。

 結果として、売上高利益率が上がり、ROEも上昇する構造になっています。

ROEと組み合わせて、PBRやPERをチェックする

―― ROEが10%なら、純資産が毎年10%ずつ増えていくということであれば、株価も年10%ずつ上がると考えていいのでしょうか?

栫井:単純にそういうわけではありません。

 株価というのは純資産だけでなく、投資家たちの評価によって決まるからです。

 そこで、PBRやPERといった指標で、割安感、割高感を見ていきます。

 仮にROEが10%で、PBRが1倍(時価総額=純資産)の企業があるとすれば、株価もおおむね毎年10%ずつ上がっていくと見通すことができます。

※PBR:株価純資産倍率
PBR

=時価総額÷純資産

=株価÷1株あたり純資産

 ただし、たとえばオービックのようにPBRが5.5倍(2025年6月25日時点)もある場合、投資家からの人気が高く、すでに将来の成長が株価に織り込まれているわけです。

 実際にオービックの株価はここ5年ほど横ばいです。ビジネスは成長していても、株価は上がりにくいというケースもあるのです。

―― では、PBRが低い企業のほうが狙い目ということですか?

栫井:一概にはそうは言えません。

「PBRが低い=割安」とされる一方で、それは投資家から評価されていないという意味でもあります。

 逆に、オービックのようにPBRが高い企業は、それだけ市場から評価されている優秀な企業とも言えます。

―― では重要度としては、まずROE、それからPBRやPERでしょうか?

栫井:成長株投資という視点であれば、その通りです。

 まずROEで成長性を見て、次にPBRやPERで「株価にどれくらい織り込まれているか」を分析するのがよいと思います。

 ただし、PBRが低い企業のなかには、本来持っている稼ぐ力が評価されていない「お宝銘柄」が眠っていることもあります。

 たとえば、業界全体が評価されていなかったり、一過性の要因でPBRが下がっていたりするような企業ですね。

 評価が回復すれば、株価も大きく上昇します。

 これは、どちらかと言えば上級者向けの投資手法かもしれませんが、うまく見つけられれば、大きなリターンが期待できます。

―― PERはどう見ればいいでしょうか?

栫井:PERは「株価÷1株あたり利益」で計算される指標です。

※PER:株価収益率
PER
=時価総額÷純利益
=株価÷1株あたり利益

 一般的には低いと割安、高いと割高とされますが、これもPBRと同様に優秀な企業ほど、株価が高くなるので、PERも高くなる傾向にあります。

 ですので、PERが低ければいいというわけではありません。

 PERが低ければ、むしろ「成長が期待できない会社」として見られている可能性もあります。

スクリーニングの手順

栫井:ちなみにROEとPER、PBRの関係を頭に入れておくと、銘柄をスクリーニングする際に役立つと思います。

※ROE=PBR÷PER

―― PBRが高くてPERが低い企業は、ROEが高いということですね。

栫井:はい、その通りです。

 例えば、株探「52週安値を更新した銘柄」のリストを表示します。直近で下がっている企業の中から、優良企業はないか見つけ出す方法です。

 リストにはPBRやPERでソートできる機能があるので、PBRが高い順に並べ替えます。

 PBRが高い企業の中で、PERが低い企業、つまりROEが高い企業をざっとスクリーニングしていきます。

 これをすることによって、単にROEが高いだけではなく、PERで見た際の割安感も加味したスクリーニングを行うことができるのです。

 もしリストから目ぼしい銘柄が見つかれば、さらにその銘柄を細かく見ていきます。

 ROEの推移をチェックし、長期的にROEの水準が高ければ、投資対象として魅力的なので、さらにその企業のビジネスを分析していきます。ここからは、先ほど説明した、定性面での補完を行うのです。

 これが私が行う企業のスクリーニングと分析の基本的な手順です。