対する日本テレビは、こうしたフジの失敗を踏まえてか、かなり「報道シフト」の危機管理体制を構築してきているように感じます。

 例えば、日本テレビおよび親会社の日本テレビホールディングスでは、株主総会および取締役会での承認をもって6月27日付で役員の異動や担務変更が行われる予定ですが、執行役員の伊佐治健氏の担当領域は「報道、広報補佐」となっています。これまでは報道のみだったので、広報補佐が加わった形です。

 伊佐治氏は社会部、政治部などを経験し、「news zero」のチーフプロデューサーを務めた報道マン。加えて、広報部長を務める下川美奈氏は、元警視庁キャップで社会部長を経験し、社会部記者の性質もよくわかっているはずです。

 こうした体制を見ても、問題が生じたときに“報道で受けて立つ”シフトをつくろうとしているなと思いました。

 また、私がもう一つ感心したのは、問題の公表までに日本テレビ社内や関係者から情報が漏れなかったこと。5月末に事案を把握してから、約3週間かけて調査を行ったといいますが、その期間に週刊誌などのメディアでこの問題が報道されることはありませんでした。

「ザ!鉄腕!DASH!!」のような大型番組の場合、制作会社なども含めると関係者が100人ほどに上ることも珍しくありません。局員だけでなく、制作会社やフリーランスのディレクター、放送作家なども含まれるはずなので情報統制は難しい。3週間も調査期間があれば、どこかから情報が漏れてもおかしくないですが、それがなかったのはすごいと思いました。

中身がなくても会見を開いたワケ
日テレが背負う“十字架”とは

 一方で、今回の会見では、国分氏にコンプライアンス上の問題があったとしつつ、その詳細については、プライバシー保護を理由に具体的な内容が明かされることはありませんでした。メディアやSNSでは「中身がない」とも評されています。

 では、日本テレビが、そのように「何も話せない状態」であっても会見を開いた目的とは何だったのか。端的にいえば、“アリバイ作りの会見”だったのではないかと思います。