個人投資家の間で話題を呼ぶ1冊がある。『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』だ。株で勝つための考え方をストーリー形式でやさしく解説し、「本当に知りたかったことが書かれている!」と絶賛の声が尽きない。著者は、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏。稼いでいる個人投資家は、どんな指標を見て銘柄を選んでいるのか? 本記事では、栫井氏に「成功した個人投資家が、どのような株で資産を増やしたのか」について詳しく聞いた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「資産額」に応じて、効果的な投資手法は異なる
――株式投資の初心者が、株で勝つためには、どんな株を狙っていくのがいいのでしょうか?
栫井駿介(以下、栫井):まず大前提として、資産額によってとるべき投資戦略は異なります。
資産額が大きい人は、わざわざ大きなリスクを取る必要がありません。
そのため、資産額が大きい個人投資家には、高配当株が好まれているように感じます。
高配当株は、安定したリターンが見込めるため、王道の投資スタイルとして根強い人気があります。
一方、見込まれるリターンは4~5%程度であり、少額からスタートする個人投資家が、高配当株だけで資産を大きく増やすのは現実的に難しいでしょう。
短期のトレードはゼロサムゲーム
――では、もっと大きな値上がり益を狙うには、どのような手法がありますか?
栫井:値上がり益を得る投資には、大きく分けて「短期」と「長期」の2つのスタイルがあります。
短期投資は、値動きの大きい銘柄を短期間で売買し、利益を狙う手法です。
一部には成功しているトレーダーもいますが、短期売買はセンスが問われる世界であり、一部の大勝ちしている人の裏で、多くの人が負けているのが現実。
なぜなら、上手い人は「群衆」の動きを出し抜くことで利益を出しているからです。
そこでは、ゼロサムゲームの要素が強く、誰にでも再現できる投資スタイルとは言えないので、すでに自信がある人でなければ、私からはあまりおすすめしません。
「成長株」と「割安株」――長期投資の2つの選択肢
――では、長期で値上がり益を狙うにはどんな株を買っていけばいいのでしょうか?
栫井:長期で、大きなリターンを狙う方法は、大きく2つに分けられます。
1つは成長株投資。売上や利益の成長率が高い株に投資し、長期で保有する投資です。
例えば、オービック(4684)は10年で株価が5倍以上に、ファーストリテイリング(9983)も15年で約10倍に成長しています。
このように、将来性のある企業を見極めて長期保有することで、「気づけば資産が何倍にも膨らんでいた」という夢のある投資が可能になります。


栫井:もう1つは割安株投資です。
ウォーレン・バフェットが「シケモク投資」と呼んだ手法です。
資産や利益に対して株価が明らかに低い企業に投資し、見直しが入るのを待つスタイルです。
成長株は、多くの投資家から注目が集まるような銘柄ですが、割安株は市場であまり注目されていない、比較的地味な銘柄です。
例えば、建機レンタルのニシオホールディングス(9699)は、2020年には、株価が2000円付近で、PERは約6倍という水準まで売られていました。
2021年に入ってから株価が急回復。2021年4月には、あっという間に3000円台を突破し、現在は4000円付近で推移しています。

栫井:このように極端に割安な銘柄を見つけられれば、買値によっては数倍のリターンを狙える可能性もあります。
割安株を買っている個人投資家は、「いつ上がるか」ということを必ずしも見込んでおらず、安値で買った後は、「どこかで他の投資家も気づくだろう」と、じっと待っているんです。
投資初心者におすすめの投資は?
――株式投資を始めたばかりの人には、どのスタイルが向いていますか?
栫井:業績や指標を読んだり、企業を分析することにまだ慣れていないという人は、高配当株が最も簡単だと思います。
色々な銘柄を見ていく中で、自然と業績や指標にも目が向くようになるはずです。
もっと大きなリターンが得られる株を自分で発掘したいと思うようになれば、成長株や割安株に移行するのがよいと思います。
特に、先ほど例に出した成長株に出会えれば、企業が勝手に成長するので「持っているだけ」で資産が増えていくという、最も手間のかからない効率的な投資スタイルを実現できます。
一方、割安株投資は、銘柄の見極めや売却のタイミングが非常に重要になります。ある程度の分析力や経験が必要ですが、このスタイルで大きく資産を増やしている個人投資家も少なくありません。
ただし、企業の財務状況を読み解く力と周囲に惑わされない忍耐力が必要な投資法と言えるでしょう。