その光景を横目に私は掃き掃除をしながら、

「みんな必死になって生身系のキャラクターのサインをもらっているけど、それって郷ひろみとか松田聖子のソックリさんからサインをもらうのと一緒ではないのですか」

 などと身も蓋もないことを考えていた。

ディズニーランドの清掃員は見た…人気キャラ目当ての客に「不人気キャラ」が仕掛ける“ツラすぎる営業術”笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)

 よく観察していると、サインを求められて身動きのとれない人気キャラクターがいる一方、誰も近寄らない不人気キャラクター*もいる。

 人気キャラは多くのファンに囲まれ、写真を撮ったり、サインをしたりしている。不人気キャラはそれを眺めながら、所在なげにその場にただただ佇たたずんでいる。

 その状況に耐えられないのか、なかには自分からゲストにすり寄っていく不人気キャラもいる。ゲストのほうも思いもしなかったキャラクターからのアプローチに戸惑っている。

 どの世界でも人気がないのは哀しくてツライ。

 その光景を眺めながら、私は不人気キャラクターの「中身」の人のモチベーションが心配になってくるのであった。

海外研修
キャストになって4年目、海外研修(キャスト・ハピネス・ツアー)に参加した。毎年、希望者を募って行なわれる研修で、幸運にも当選した。旅費を負担してくれるばかりか、少額ながら日当も出る。行き先はアナハイム「ディズニーランド・パーク」。参加者は総勢37名だった。本場のカストーディアルキャストはゆったりと落ち着いて作業している様子だった。なかでも、ゲストを積極的に喜ばそうとするサービス精神旺盛で陽気なキャストが印象に残った。
中身
数年前のキャラクター募集では、応募資格は身長138~152センチおよび170センチ以上と、キャラクターのサイズに合わせて2タイプ募集していた。「中身」の人は、その経験をほかの人に話したくなると思う。我慢する意志を貫くのはさぞかしたいへんだろう。私なら…我慢できそうもない。
不人気キャラクター
生身系では、映画「ノートルダムの鐘」に登場するヒロインの「エスメラルダ」は私が見たところ、あまり人気があるとは思えなかった。知名度が低いためと思われるが、なんだか気の毒だった。