
東京ディズニーリゾートに57歳で入社し、65歳で退職するまで、私がすごした“夢の国”の「ありのまま」をお伝えしよう。楽しいこと、ハッピーなことばかりの仕事などない。他の全ての仕事と同様、ディズニーキャストだってそうなのである。
※本稿は笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ、2022年2月1日発行)の一部を抜粋・編集したものです
某月某日 不人気キャラクター
人知れぬ哀しみ
パークのキャラクターは大きく分けると2タイプある。「かぶりもの系」と「生身系」である。
と何気なく書いてしまったが、ディズニー的には「かぶりもの」という表現はもちろんNGである。これは内部でも徹底されていて、パークではそれを絶対に言ってはいけないし、冗談でもそんなことを言う人もいない。
一緒に海外研修*に行ったときの仲間にも「中身」を演じている人がいたが、自分から話さないのはもちろんのこと、聞いてはいけない空気が充満していて仲間内で話題にすることすらタブーだった。
具体的にいうと、「かぶりもの系」はミッキーマウス、ミニーマウス、プルート、ドナルドダック、チップとデールなどなど、である。「生身系」は、白雪姫、ピーターパン、アリス、ラプンツェル、ベルなどなど、となる。
ところで、私はキャストをしているが、ディズニーのキャラクターには疎い。恥を忍んでいうと、プルートとグーフィーの違いがよくわからない。
ディズニー映画の「バズ・ライトイヤー」「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー」などに登場するキャラクター名もほとんど知らない。知らなくても別に困ることはないので、覚えようとしないのである。
「かぶりもの系」「生身系」ともにキャラクターの多くはファンタジーランドの「ホーンテッドマンション」横の木戸からオンステージに出てくる。
お目当てのキャラクターが現れるとゲストがわっと集まり、この木戸の前で即席のサイン会が行なわれたりする。