15年以上にわたり、世界中の人々にコーチングをしてきたコーチは、成功する人には年齢や分野を問わず共通する習慣があることに気づく。その習慣を最重要の100個に厳選し、1冊にまとめ、ロングセラーになっているのが、『成功者がしている100の習慣』だ。著者のナイジェル・カンバーランドはイギリス人。共同経営者として起業した会社を成功させたのち、コーチになった。自らも成功した著者が見た、多くの成功者の習慣とは?

話すことよりも、聞くことこそ信頼を生む
15年にわたって世界中の人々にリーダーシップ・コーチを務めてきた経験から、成功の可能性を最大限に引き出す「マインド」と「行動」について「100の習慣」としてまとめたのが、本書だ。
書籍の中で紹介されている「成功者のマインドセット」を普段から意識し、行動に結びつけている人はわずかしかいないと著者は「はじめに」で記している。
そして、そのわずかな人こそが、成功者なのだと。
著者自身、共同経営者として起業した会社を成功させ、数百万ドル規模で売却した経験を持っている。その後、コーチに転身した。
成功の要諦を記した本はたくさんあるが、本書には大きな特色がある。
それは、成功するための習慣を紹介するだけではなく、その「習慣の具体的な実践方法」が紹介されていることだ。しかも、極めて具体的に。これが、今なおロングセラーとして支持されている理由かもしれない。
例えば、人間関係について、成功者はどんな習慣を持っているのか。
【成功者の習慣29「周りの人と信頼関係(ラポール)を築いている」】には、こんなタイトルと名言がついている。
「他人とつながるためのもっとも基本的で強力な方法は、話を聞くこと。ただ耳を澄ますこと。私たちがお互いに与え合えるもっとも重要なものは、相手に関心を持つことなのだ」
――レイチェル・ナオミ・リメン(アメリカの作家)(P.132)
コミュニケーションでは話し方に注目が集まることが多いが、実は、聞くことこそ信頼を生むというのだ。
そして、「習慣の具体的な実践方法」として最初に「共通点を見つける」ことが掲げられている。
信頼関係構築の第一歩として、相手とじっくり話をして、自分との類似点や共通点を探すのだ。それが、相手との仲間意識を高めてくれる、と。
腹が立ったときの、3ステップ対処法
成功者の習慣59では、「簡単に腹を立てない」が挙げられている。タイトルには、「成功する人は嫌な言葉をうまく受け流し、成功しない人はいちいちやり返す」とある。
付随する名言は、メキシコの作家、ドン・ミゲル・ルイスの「被害妄想はやめよう。誰もあなたのことなど気にしていない。人はそれぞれ自分の夢や現実に従って行動しているだけだ。他人が何を言おうと、何をしようと平気でいればいい。そうすれば、不要な苦しみから解放される」。
成功のための格言としては「もし他人の言動が気になったら、腹を立てるのではなく、「つらい毎日を送っているのだな」と相手を哀れむ気持ちを持つようにしよう」とある。
興味深いのが「習慣の実践方法」として、こんな具体的なテクニックが触れられていることだ。
誰かに腹の立つことを言われても、感情をあらわにしないようにしましょう。次の3ステップの対処法を習慣化できるように訓練しましょう。
1.10まで数える。
2.笑顔を浮かべる。
3.その場から立ち去る。(P.254)
なるほど、相手にしても何もいいことはないということだ。冷静さを失わず、嫌な思いをした相手のことは覚えておく。うまく受け流す方法だ。
一方でもう一つ、印象的だったものに【成功者の習慣53「信念を曲げない」】がある。タイトルには「成功者は相手を落胆させることを恐れずに自分を貫き、成功しない人は容易なアドバイスに流される」とあるが、相手を落胆させても構わないというのだ。
アドバイスに従わないと、相手をがっかりさせてしまうこともあります。しかし、本当に自分自身に正直に生きようとすれば、必ず誰かを失望させてしまうものなのです。(P.228-229)
たしかに他人にアドバイスされることは多い。しかし、それをすべて真に受けていたら、自分がしたいように動けなくなるのだ。もとよりアドバイスがどこまで本気なのかもわからない。
「習慣の実践方法」としては「罪悪感を乗り越える」と「あなたが何をしても認めようとしない人への対処法」の2つがある。
後者には、できるだけ関わらないようにし、一緒にいる時間を減らし、計画や夢について語らないようにするとアドバイスしている。
有害な人間関係は、私たちを不幸にする
人間関係で重要な習慣として挙げられているのが、無理に付き合わないということだ。【成功者の習慣66「友人を選んでいる」】に加え、さらに踏み込んだ【成功者の習慣82「有害な人間関係は断ち切る」】もある。
後者はタイトルで「成功する人は悪影響を受ける人間関係は断ち切り、成功しない人は断れずにネガティブな影響を受け続ける」と記し、「有害な人間関係は、私たちを不幸にするだけではない。それは私たちの人間関係全般を損なうような悪しき態度や感情を促し、持ち得たかもしれない素晴らしい関係の存在を忘れさせてしまうのだ」というマイケル・ジョセフソン(アメリカの弁護士)の言葉を紹介している。
本書でも紹介されているが、「あなたがどんな人間かは、親友を5人見ればわかる」ということわざがある。自分が選んだ友人たちから、良くも悪くも大きな影響を受けているのだ。
自分を成長させてくれる存在もあれば、悪い方向に向かわせる存在にもなる。家族と違い、友人は選べる。【成功者の習慣66「友人を選んでいる」】の「習慣の実践方法」の一つには「勇気を持って友人を選ぶ」が掲げられている。
誰かと出会ったからといって、その人と友人にならなければいけないわけではありません。一緒にいると苦しく、不快感を覚えるのなら、関係を断ち切ることを考えましょう。次のような特徴の人たちに気をつけましょう。
・意地悪で不親切
・見下し、嫉妬する
・利己的でナルシスティック
・不快な価値観、意見、行動(P.282)
【成功者の習慣82「有害な人間関係は断ち切る」】では、有害な人間関係から生じる悪影響が、他の人間関係や人生全般にも及んでしまうことだと、例が挙げられている。
・あなたの夢や目標を実現するのは無理だ、と否定的な言葉を口にする親
・嘘ばかりつく友人
・いつもあなたの時間やお金、労力を求めてくるのに、あなたが困っているときには助けられないと言い訳をする人
・何かと指図をしてくる人、やりたくないことを無理に押しつけてくる人(P.343)
もしや、頭の中に思い浮かぶ人がいるのではないか。それは有害な人たちだと著者は記す。そうした人たちとは、別れを告げるべきだ、と。
そして、「習慣の実践方法」の一つとして「できる限り接触しない」が掲げられている。それが親族だったとしても、できることはあるのだ。
ブックライター
1966年兵庫県生まれ。89年早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスとして独立。書籍や雑誌、webメディアなどで幅広く執筆やインタビューを手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。著者に代わって本を書くブックライティングは100冊以上。携わった書籍の累計売上は200万部を超える。著書に『メモ活』(三笠書房)、『彼らが成功する前に大切にしていたこと』(ダイヤモンド社)、『ブランディングという力 パナソニックななぜ認知度をV字回復できたのか』(プレジデント社)、『成功者3000人の言葉』(三笠書房<知的生きかた文庫>)ほか多数。またインタビュー集に、累計40万部を突破した『プロ論。』シリーズ(徳間書店)などがある。