
近年、全国各地で台風やゲリラ豪雨による洪水・浸水被害が頻発している。従来の河川の氾濫に加え、市街地で雨水の排水が追い付かず建物に浸水する内水氾濫が増えているのも最近の傾向だ。こうした、場所を問わず水害対策が求められる時代にあって、従来の土のうに代わる防災用品が注目を集めている。兵庫県のフジ鋼業が手がける止水板「Flood Guard (フラッドガード)F」だ。(取材・文/大沢玲子)

同社は1965年に創業。工作機械の製造・販売を起点に、82年から草刈り機などのチップソー(替え刃)製造・販売を主軸に事業を展開してきた。3代目として、同社代表取締役を務める藤井健吾氏が止水板に着目した契機は、2019年に起こった東日本台風だった。
「甚大な被害をテレビで目にし、昨今の地球温暖化を踏まえると、水害がますます増えるのではないか。そんな危機感を覚えたのがきっかけでした」(藤井氏)
当初は、中国メーカーが手がけていた止水板に目を付け、販売代理店として日本で販売を開始する。しかし、止水の性能が悪く、自身で改良を加えるも抜本的な解決に至らない。

そこで、機械メーカーとして培った技術とノウハウを生かし、一から止水板の設計・開発をスタート。開発に当たっては、「自社や中国の合弁会社に併設したプールで止水機能をテストし、改良を重ねていきました」(藤井氏)。
こうして約1年かけ、20年11月、日本製としては初の止水板Flood Guard Fが完成。21年から販売をスタートさせる。
耐久性がありながら
軽量で設置・撤収も簡単
では、Flood Guard Fの特徴、強みはどこにあるのか。一つ目は、何といっても優秀な止水性能を有していることだ。素材は耐久性のあるABS樹脂を使い、倒れない仕組みとして底面部にかかる水圧で本体を固定。背面部と底面部に設けたU字加工により、水流の圧力を分散させ、漏水を軽減するために止水テープ、止水ゴムを各所に配置している。