
米国の人工知能(AI)開発加速を目指し発表された5000億ドル規模(約73兆6400億円)の取り組みが始動で苦戦しており、当面の計画が大幅に縮小されていることが分かった。
ソフトバンクグループを率いる孫正義氏は半年前、ドナルド・トランプ米大統領や米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)と並んで「スターゲート・プロジェクト」を発表。だがその実現に向けて新たに設けられた企業は、データセンターに関する契約を1件も結んでいない。
ソフトバンクとオープンAIは共同でスターゲートを主導しているものの、事情に詳しい関係者らによれば、建設場所など提携の重要な条件を巡って対立が続いている。
両社は1月の発表では1000億ドルを「直ちに」投資すると説明。だが現在は年末までに、オハイオ州に小規模なデータセンターを建設するという控えめな目標を掲げているという。
スターゲート始動の遅れは、孫氏が掲げる大きな野望にとって後退を意味する。同氏は長年にわたり巨額の投資を行ってきたものの、急速に進化するAI分野では後塵(こうじん)を拝している。
ソフトバンクは今年初め、オープンAIに300億ドルを出資。これは過去最大のスタートアップ投資であり、ソフトバンクにとっても新規の借り入れと資産売却を迫られる巨額の賭けとなった。またこの投資はスターゲートの計画と並行して行われ、ソフトバンクはAIに必要な物理的インフラに関与していく形となった。
一方で自社の主力製品であるチャットGPTを巡り、その次世代版に必要なコンピューティング能力を確保したいアルトマン氏は、ソフトバンクを待たずに他の事業者とデータセンター関連の契約を結んでいる。