絶頂か崩壊か 半導体AIバブル#2Photo by Masato Kato

ソフトバンクグループの孫正義氏が、米オープンAIと提携して巨大データセンターを建設する「スターゲート計画」を推進している。さらに、米半導体アンペア・コンピューティングの買収にも乗り出した。特集『絶頂か崩壊か 半導体AIバブル』の#2では、孫氏の最側近である後藤芳光専務執行役員CFO(最高財務責任者)に、その狙いの全貌を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 村井令二)

AIの演算能力が絶望的に不足
78兆円投資は孫氏の不退転の決意

――ソフトバンクグループ(G)は米オープンAIと組んで、巨大データセンターを建設するスターゲート計画を推進中です。孫正義会長兼社長が、5000億ドル(約78兆円)という投資額を米トランプ大統領の前で表明したことはインパクトがありました。

 5000億ドルはなかなかの金額ですよね。孫さんとオープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)は、AIには巨大なコンピューティングパワーが必要で、莫大な電力も必要になるという認識を持って、ここ1~2年議論してきました。サムのような天才的な技術者が世界中に現れても、それをAIサービスに落とし込むには、気が遠くなるほどのコンピューティングパワーが必要です。しかし、そのためのデータセンターが絶望的に不足している。

 これはオープンAIだけが主張しているわけでなく、(アマゾン・ドット・コム、グーグル、マイクロソフトなど)米ハイパースケーラーをはじめAIのリーディングカンパニーの皆が言っていることで、各社ともデータセンターの発表を相次いで行っています。

 では、AI業界でどれくらいのデータセンターを必要としているのか。それは、われわれが掲げた5000億ドルでは済みません。もっと巨大になりますが、まずはオープンAIとわれわれが組む上で、このくらいのボリュームが必要だという規模を示すことが必要です。それが、4年間で5000億ドルということです。

 実際はスターゲートなどという表現ではなくても、「ソフトバンクGとオープンAIがメガデータセンター事業を始める」という発表でもよかったのかもしれません。ただ、それではAIの世界が絶対的に必要としているものが正確に伝わらない。巨大な投資であっても、「不退転の決意」でAI革命を引っ張っていくという孫さんの強い思いがあって、ああいった発表を行いました。

 その資金調達については着々と準備を行っています。

ソフトバンクG、オープンAIに加え、米オラクルが主導して、4年間で複数のAIデータセンターの建設を進めるスターゲート計画が始動した。ソフトバンクGの財務を預かる後藤氏は、その資金調達に自信を示す。次ページで、ソフトバンクGのAI・半導体戦略の全貌を、孫氏の最側近である後藤氏が余すことなく語る。