
米芸術家アンディ・ウォーホルもジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長には太刀打ちできない。高額絵画は金利上昇の影響を受けやすく、経験豊かな投資家でさえ予想できなかったほどであることが明らかになってきた。
最高価格帯の美術品市場のバブルがはじけた。アート市場調査会社アートタクティックのデータによると、1000万ドル(約14億6900万円)超の絵画のオークション販売は2024年に44%減少し、25年も低迷が続く。市場の変化はニューヨークのサザビーズが5月に行ったオークションで明らかだった。希望価格7000万ドルのアルベルト・ジャコメッティの彫刻に入札が1件もなく、出品取り消しを余儀なくされた。
これは異例なことだ。イエール大学のウィリアム・ゲッツマン教授は、2世紀以上にわたる美術品オークションの記録を1993年と2010年に分析した。その結果、絵画は価格が株式市場と相関関係にあり、インフレヘッジとしてうまく機能することを突き止めた。
つまり歴史に基づけば、S&P500種指数が過去最高値圏にある時は最高価格帯の美術品市場は好調なはずだが、この相関関係が崩れたようだ。
最高価格帯の美術品市場の不振は、超富裕層の収集家が将来に不安を感じている兆候だろうか。関税や経済の不透明感により、多額の資金を絵画のような非流動資産に変えることに慎重になっているのかもしれない。
だが超富裕層の収集家が不運に見舞われているわけではない。アート・バーゼルとUBSのアート市場リポートによると、2025年年初時点で彼らが保有する富は15兆6000億ドルと過去最高を記録し、19年の水準を80%上回った。