ロンドン地下鉄「まるで地獄」、暑さ対策に限界もPhoto:Bloomberg/gettyimages

【ロンドン】英ロンドンの地下鉄は100年前、夏は「地下のほうが涼しい」とうたって乗客を呼び込んでいた。今となっては、それは皮肉な冗談にしか聞こえない。

「本当に地獄みたいに感じる」。ロンドンに住む学生のフセイン・ザイターさんはそう話し、路線の中でも特に暑いセントラル線は「無料のサウナだ」と冗談を飛ばした。

 ロンドンで夏に地下鉄に乗ることは長年、蒸し風呂に入るような不快な体験となってきた。地元市民にとっては困ったことに、地下鉄は暑いだけでなく、さらに暑くなっている。どうやって暑さを和らげるかというのは、エアコンの設置で済むような簡単な問題ではない。

 技術者らは数十年にわたり、暑さ緩和に取り組んできた。産業用送風機から巨大な氷の塊に至るまでさまざまな手段を試したものの、解決策は見つかっていない。

 ロンドン地下鉄が世界最古の地下交通機関として1863年に開業して以来、地下では熱が徐々に蓄積してきた。ロンドン交通局(TfL)の測定によると、各路線において温度は過去10年の間に平均でセ氏1〜3度上昇した。

 夏場の地下鉄の温度は現在、英国で牛や豚、羊を輸送する際の法定上限であるセ氏30度を超えることも珍しくない。

 地上の気温は地下鉄の暑さにはほとんど影響を与えない。夏の間は地下鉄内の温度は30度前後でほぼ一定している一方、地上の気温は夜間には10度台まで下がり日中には40度まで上昇するなど、大きく変動する。

 ザイターさんはパリとニューヨークの地下鉄にも乗ったことがあるが、ロンドンほどひどくはないと話した。

 ロンドン在住のミュージカル俳優、ベリティ・ウォーカーさんは、地下の暑さは体にまとわりつくように感じられるという。「オーディションに行くたびに、自分が臭っていないか心配になる」とし、「この環境を考えれば、夏は運賃を下げるべき」と語った。

 環境活動家らは暑さ問題への関心を高めようと、車両を個室サウナに見立て、バスローブを羽織って髪にタオルを巻いた姿で地下鉄に乗り、市内を巡った。