2025年も折り返し、トランプ関税や世界的な物価高、少子高齢化、移民問題といったニュースが次々と世間を騒がせる一方、新聞やテレビでは見えにくい“真のリスク”が見落とされています。そんななか、「ポジショントークなし」の冷静かつ分かりやすい経済解説をYouTubeで発信し、ビジネスパーソンを中心に人気を博しているのが、元機関投資家のモハP氏です。
「みんなが信じる情報に価値はない」「すべての情報を疑え」という彼の機関投資家思考は、「情報」が生成され続けるAI時代に必須のスキル。同氏初の著書『日本人だけが知らない世界経済の真実』の一部を抜粋・構成し、既存メディアが報じない世界の動きを解き明かします。

関税は誰が大統領でも避けられなかった
7月31日、トランプ大統領は、日本に対する15%の相互関税を課す大統領令に署名しました。この関税は、EUなどにも適用される見通しです。日本の多くのメディアでは、アメリカ国内産業の保護を目的とする一方、貿易相手国との関係悪化や世界経済への悪影響を懸念する見方が強いです。
しかし、今回のトランプ関税は本当に「愚かな政策」なのでしょうか?
まず、トランプ大統領の狙いについて考えてみましょう。アメリカの経済構造は従来、消費大国として大きな貿易赤字を抱える一方、世界から投資を呼び込むことで成立してきました。
トランプ政権は、この貿易赤字を削減しながら、同時に米国債を含めた海外からの投資に依存しない経済構造を目指していると考えられます。これは、アメリカが超大国から普通の国へと変化する流れの一環とも捉えられるでしょう。
軍事的にも「世界の警察」としての役割を果たせなくなったと言われて10年以上が経過し、経済的にもこれまでのような振る舞いが難しくなってきています。赤字を垂れ流しながら海外からの投資によって経済を支え、大量消費を続けるという構造は、超大国アメリカだからこそ可能だったものです。
しかし、もはやこの状態を維持することはできず、貿易の不均衡を是正しなければ、超大国ではなくなりつつあるアメリカは存続できないのです。
この状況はバイデン政権時代からすでに始まっていたことであり、トランプ政権でなくとも、誰が大統領になっても遅かれ早かれ対処せざるを得ない問題でした。したがって、トランプ政権が極端に異常なことをしているわけではなく、手法が強引であったり、厳しい言葉を使ったりする側面を無視すれば、このように理解することもできます。
しかし、そうした政策を進める中で、なぜ今回のような金融市場の混乱が生じたのでしょうか。トランプ政権はこれを予測できなかったのでしょうか。マーケットの反応予測の難しさは別として、なぜ関税導入を急いだのかという疑問があります。
関税導入は物価上昇をもたらすため、段階的に実施すればアメリカの物価への影響はそれほど大きくなかったはずです。このように急いで関税を課さず、より緩やかに進めていれば、アメリカ経済への悪影響も抑えられたでしょう。