2025年も折り返し、トランプ関税や世界的な物価高、少子高齢化、移民問題といったニュースが次々と世間を騒がせる一方、新聞やテレビでは見えにくい“真のリスク”が見落とされています。そんななか、「ポジショントークなし」の冷静かつ分かりやすい経済解説をYouTubeで発信し、ビジネスパーソンを中心に人気を博しているのが、元機関投資家のモハP氏です。
「みんなが信じる情報に価値はない」「すべての情報を疑え」という彼の機関投資家思考は、「情報」が生成され続けるAI時代に必須のスキル。同氏初の著書『日本人だけが知らない世界経済の真実』の一部を抜粋・構成し、既存メディアが報じない世界の動きを解き明かします。

世界経済の真実Photo: Adobe Stock

「貯蓄から投資へ」の真実

 少子高齢化、人口減少、そして「貯蓄から投資へ」という社会の変化の中で、日本経済がどうなっていくのでしょうか。

 日銀が定期的に公表している資金循環統計によると、2024年末時点で家計の金融資産が過去最高の2230兆円に達しました。これは日本人が保有している金融資産の合計額です。

 もちろん住宅ローンやカードローンなどの負債もありますが、これらを差し引いても1833兆円となります。つまり、借金を返済しても日本人は1833兆円の資産を保有していることになります。

 この個人金融資産は継続的に増加しており、その推移は人口動態と密接に関係しています。金融資産が大きく伸びた時期を見ると、1980年代のバブル期に急速に増加し、その後再び伸びが加速したのが2010年代以降です。初めて1500兆円を超えたのは2004年度でしたが、2010年代まで1500兆円前後で推移していました。

 2010年代に入って再び急速に伸び始め、2021年に2000兆円を超えました。この時期の特徴的な出来事は、団塊世代が退職して多額の退職金を得たことです。人口のボリュームゾーンである団塊世代が大量に退職し、退職金を受け取ったことで、企業部門が保有していた資金が家計に移転したのです。

 金融資産の内訳については、日本人が預金に偏重しているという点がよく指摘されます。金融資産に占める預金の割合は、バブル崩壊以降ほとんど変化せず、5割前後で推移しています。バブル期には株式投資が活発になり、株価上昇の影響もあって預金の割合がやや低下しましたが、バブル崩壊後は約5割で安定しています。