金融資産は東京に集中する
私は今後も家計金融資産は減少しないと考えています。
先進国において家計資産が顕著に減少したケースはほとんどなく、経済・社会が成熟すると将来の生活設計を考えて貯蓄や保険での備えが行われるため、金融資産が著しく減少することは考えにくいからです。また、富の格差拡大により、金融資産の大部分を一部の富裕層が保有することも、家計金融資産の増加要因となります。
今後も家計金融資産は増加する可能性が高く、金融関係企業や政府がこの資金を活用したいと考える状況は続くでしょう。NISA、資産運用、資産防衛、相続など、様々な形でこの巨大な家計金融資産を活用しようとする動きが活発化することが予想されます。
ただし、金融資産の構成比には変化が生じるでしょう。特に保険の減少が予想されます。子どもの減少や女性の社会進出により、生命保険のニーズが低下しているためです。また、人口の東京集中により、相続時に地方から東京への資金流出が進んでいます。
まとめると、今後も日本の家計金融資産は増加を続ける可能性が高いものの、その構成比には変化が生じると考えられます。金融機関や政府は様々な方法でこの資産を活用しようとするでしょうが、これらは必ずしも資産保有者の利益を考えた政策ではありません。
政府の推進する投資で損失を被っても自己責任となるため、私たちは国やみんなが推奨するからではなく、自分にとって本当に必要なものかを判断することがますます重要になります。
「貯蓄から投資へ」という政策により、預金があたかも悪であるかのように語られることがありますが、国や金融機関、周囲の人々の意見にかかわらず、自身のリスク許容度に合った資産形成を行うことが最も重要です。
(本稿は『日本人だけが知らない世界経済の真実』を一部抜粋、構成したものです)
元機関投資家/ファンドマネージャー
資産運用会社等で20年以上、債券・為替・株式・デリバティブ等の資産運用関連業務に携わったのち独立。世界の経済ニュースを伝える「【世界経済情報】モハPチャンネル」を2021年からYouTubeで配信し始め、金融知識がなくてもサクッとわかりやすい解説が好評を博す。2025年5月現在、登録者数は22万人超、公開動画は1000本超、総視聴数7000万回を突破。「速さ・中立性・わかりやすさ」を信条に、世界各国のマクロ経済・金融政策をリアルタイムで分析。難解な指標を噛み砕く語り口と、元機関投資家ならではの視点が個人投資家・経営者・政策関係者から高く支持される。本書が初の著書となる。
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