米雇用統計「大幅下方修正」はスタグフレーション入りの兆候か!?トランプ関税“実体経済波及”の新局面Photo:Win McNamee/gettyimages

トランプ政策、米経済への影響注視の段階に
市場の反応見て調整するトランプ手法

 トランプ第2次政権は発足から半年を過ぎた。

 大統領選挙戦中から掲げられていた過激な政策群、全世界に対する関税引き上げや、トランプ減税の恒久化に各種追加的減税を加えた拡張的な財政政策、不法移民の強制退去を含む移民抑制は、いずれもグローバル経済のみならず米国経済に対しても大きな悪影響を及ぼすものが多いと見込まれ、その本気度が疑われていた。

 これまでのところを見れば、トランプ大統領はこれらの政策を全て実行に移している。ただ、手法としては、まずは大胆に打ち出し市場の反応を見てその度合いを調整する、というパターンを繰り返している。市場と相談しながら自分の行いたい政策の限界を試すというやり方だ。

 その様は、一部ではTACO(“Trump Always Chickens Out”「トランプはいつもビビる」)と、市場などからやゆされることもあった。だが、結果として足元の米国の株式市場はトランプ大統領就任前の高値を更新し、一時大きく動揺した債券市場と為替米ドルもひとまず安定を取り戻しつつある。

 だがトランプ関税や減税の実体経済への影響が本格的に顕在化するのはこれからだ。

 8月1日に発表された7月雇用統計では、非農業雇用者数が+7.3万人と市場予想を下回ったうえ、過去2カ月分が累計で25.8万人もの大幅な下方修正となった。一方でインフレ率はなお高めで財価格では伸び率が切り上がっている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)に対するトランプ大統領の「利下げ要求」は一段と強まるだろう。

 スタグフレーションの「入り口」に向かうのかどうか、トランプ政策の実体経済への影響を注視する新たな局面だ。