「人に嫌われたくない」「いつもいい人でいなければ」と無意識に自分を押し殺している人もいるのではないだろうか。そんな生き方に限界を感じている人はぜひ『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著、藤田麗子訳)を読んでほしい。つらさを一人で抱え込んでしまう人たちに寄り添いながら、心を軽くしてくれる1冊。今回は、本書の内容をふまえて、ベストセラー『子どもが本当に思っていること』著者の精神科医さわ先生に、「人間関係がつらく感じるときにどうすればいいか?」について、深掘りして話を聞いた。(取材:ダイヤモンド社・林えり、構成・文:照宮遼子)

「自分に合わない人はいる」と割り切る
――『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』は、人間関係に悩む人、他人に合わせすぎてつらくなっている人に強く共感を生んでいるようです。
精神科医さわ(以下さわ):人との関係性に悩む人の多くは、根本に「人に嫌われたくない」「いい人でいたい」という強い思いがあります。でも、人間関係というのは、そもそも相性の問題です。誰とでも分かり合えるわけではないし、合わない人がいてもおかしくないんです。
――「合わなくていい関係もある」と思えると、心がラクになりそうです。
さわ:嫌いな人を無理に好きになろうとしなくていいし、「自分とはうまくいかない関係だった」と割り切って手放すことも、自分を守る大事な手段だと思います。
――たしかに、「みんなと仲良くしなければいけない」という考えがしんどさを生んでいるのかもしれませんね。
さわ:はい。本書にも「不親切な人にまで気を使う必要はない」という内容がありますが、「無理に他人に合わせなくていいんだ」と意識するだけで、人間関係がグッとラクになりますよ。
「人付き合いがしんどい」根本的な理由
――人間関係そのものに苦手意識がある人には何か共通点があったりしますか?
さわ:たとえば、子どもの頃に悩みを打ち明けられるような安心できる人が周りにいなかったりすると、「人と関わるのは苦しいものだ」「どうせ自分の気持ちはわかってもらえない」と無意識に刷り込まれてしまうことがあります。そうすると、大人になってからも、無意識のうちに「人と関わる=苦しい」と思ってしまうわけです。
――たしかに、助けを求めたのに、相手に受けとめてもらえなかった経験があると、「どうせ相談してもムダだ」と思ってしまうのもわかる気がします。
さわ:とてもよく聞く話です。たとえば、スクールカウンセラーや精神科医、学校の先生に相談してみたけど、逆に落ち込んでしまった……というケースは珍しくありません。
――人に期待すること自体に疲れてしまった人に、本書が必要とされているのかもしれませんね。
さわ:そうですね。文章が優しく、愛情にあふれているので、多くの人の心に刺さるのだと思います。
