FRBパウエル議長Photo:Natalie Behring/gettyimages

 米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は、5年前に発表した特徴的な政策革新から静かに撤退する準備を進めている。

 FRBは2020年、ゼロ近辺の金利と低い物価がもたらすリスクに焦点を合わせ、金利設定のアプローチを改革した。現在は、高水準で変動の大きくなったインフレという逆の問題に直面する中、当局者はこのアプローチをもはや適切ではないと見なし、廃止する準備をしている。

 FRBのジェローム・パウエル議長は22日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で、こうした変更を説明する見通しだ。FRB議長の講演は、中央銀行関係者の間で最も注目される年次講演となっている。

 パウエル氏は、FRB議長としてジャクソンホール会議での最後の講演となる今回の講演で、何カ月にも及んだ見直しの結論を説明するという注目度の高い機会を得る。重要な革新策を放棄する結論に至ったことを説明するとともに、この変更が過去40年で最悪のインフレ高進を招いたとの批判に反論する。

 今後の変更は、短期的な政策判断には影響を与えない。むしろ、これはFRBが「枠組み」と呼ぶものの一部。この枠組みは、低インフレを維持しつつ健全な労働市場を促進するという議会から与えられた使命をFRBがどのように解釈するかを示すものだ。この枠組みは、FRBが2%のインフレ目標を正式に設定した2012年に初めて発表した声明で成文化されている。

 2020年の変更は主要な二つの変更を含んでいた。第1に、FRBはインフレ率が目標を下回った期間の埋め合わせのため、インフレ率が2%の目標を一時的にやや上回ることを容認することとした。第2に、当局者は失業率が低過ぎることについては懸念せず、高過ぎることだけに着目し、景気の過熱を防ぎ予防的な利上げをすることの緊急性を低下させるとした。