
【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は今週、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を解任するつもりは全くないと述べ、彼がパウエル氏をたたきのめそうと躍起になっているとの誤ったストーリーをメディアが押しつけていると批判した。
しかし、ホワイトハウス内には、パウエル氏の解任についてトランプ大統領が最近公の場で示した考えを真剣に受け止めた高官もいる。事情に詳しい人々によると、ここ1週間でトランプ氏がパウエル氏への批判を強めた中で、ホワイトハウスの弁護士たちはパウエル氏の排除を試みるための法的な選択肢について内々に検討した。FRB創設時の法律には、FRB理事について、正当な理由がある場合に限り任期終了前に解任できると書かれてあり、裁判所は一般的に、正当な理由とは違法行為あるいは不適切な言動を意味すると解釈してきた。パウエル氏を解任する口実が見つかっていれば、ホワイトハウスはFRBとの劇的な対立に近づいていただろう。
こうした話し合いは今週、トランプ氏がパウエル氏の解任を求めないと側近に述べたことで、ストップした。事情に詳しい人々によると、トランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官からの忠告を踏まえて判断を下した。両長官は解任を目指す動きが広範囲にわたる市場の混乱の引き金になり得ることと、厄介な法廷闘争につながり得ることをトランプ氏に警告した。前出の人々の1人によると、ラトニック氏はまた、FRB理事会の他のメンバーがパウエル氏と同様に金融政策を推し進める公算が大きいため、FRB議長を解任しても、金利が実際に変更される状況につながらない可能性が高いとトランプ氏に進言した。