
ドナルド・トランプ米大統領は米連邦準備制度理事会(FRB)に利下げするよう圧力をかけている。ジェローム・パウエルFRB議長への批判を繰り返し、解任すらちらつかせている。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、FRBはいつ金利を下げるのか。黒田氏が考える米利下げ時期とその条件とは?
5会合連続で政策金利の据え置きを決めたFRB
米経済は好調だが金利を引き下げられる状況にない
ドナルド・トランプ米大統領は、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対して金利引き下げを要求しているが、FRBは金利を引き下げそうにない。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利となるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標(4.25~4.50%)について、5会合連続の据え置きを決めた。
米国の経済成長は順調で、消費者物価上昇率も2%台半ばまで低下してきており、いまや金融引き締めは必要なく、さらに金利を引き下げても良いように見える。
しかし、トランプ大統領は、25%関税(後に50%関税)を鉄鋼・アルミニウムの輸入に賦課し、25%関税を自動車・自動車部品の輸入に賦課したうえ、25~30%の相互関税を一般的に賦課しようとしている。その後、日欧とは自動車関税と相互関税は15%に引き下げる合意ができたものの、鉄鋼・アルミの50%関税は残っている。
米国のインフレ率は、年末までに4~5%に上昇する可能性があるため、金利を引き下げられるような状況にないのである。