警察官とパトカー写真はイメージです Photo:PIXTA

2003年、私は警察学校を卒業し、警察官人生をスタートさせた。約20年、色々な場所で勤務してきた。現場で汗を流す末端の警察官の、良いことも悪いことも含めたリアルな姿を描きたいと思う。※この記事は安沼保夫『警察官のこのこ日記』(三五館シンシャ)の一部を抜粋・編集したものです。登場人物は仮名です。

花金チャンス
評価は、職質検挙と交通取り締まり件数

「さあ、今日は給料日後の花金ですからね。チャンスですよ!」

 調布署地域課の統括係長が、夜勤前の指示でハッパをかける。月末の金曜日には、酒を飲んだ帰り、終電を逃すなどして、路上に停めてある自転車を失敬する人が増える。検挙数や交通違反取り締まり件数を増やすチャンスなのだ。

 われわれ地域警察官の仕事はどう評価されるのか? 身も蓋もない言い方をすれば、職質検挙と交通取り締まりの件数だ。これが多ければ優秀、少なければ尻を叩かれる。

 勤務前にこうしてプレッシャーをかけてくるのは地域課長や、1~4係のトップである統括係長(警部補)だ。月の初めには、「今月早めに検挙しておけば、あとが楽ですよ」と猫なで声で言ってくるし、月の下旬まで成績が悪い*と「実績がないと分限*になるよ」と脅されることもある。

 尻を叩かれるのは、私のような若手だけではない。先輩の浦口や神宮司もしかりで、地域警察官ならこの宿命から逃れることはできない。“取れ高”を求めて駆けずり回ることになる。

 一当務(日勤と夜勤の1サイクル)で交通違反の切符1.5本が「努力目標*」。つまり、2人で3本切れば合格。職質検挙のほうは1人あたり月1件が目安だ。まじめに努力すれば、このくらいの目標はたいてい達成できる。ただ、110番が立て込んだり、雨が降っていて人出がなかったといった外的要因もあるので成績が上がるかは運次第ともいえる。

 このように事実上のノルマがあると、どうなるか?