朝ごはんをしっかり食べさせる家庭は親が教育熱心かもしれず、それにより朝ごはんとは無関係に子どもがよい成績をとっているとも考えられます。

「朝ごはんを食べている子どもは成績がよい」を実証しようとすると、教育熱心ではない家庭の子どもに朝ごはんを食べさせ、逆に教育熱心な家庭の子どもに朝ごはんを抜いてもらってどうなるか、という実験が必要となり、これはなかなか難しいことです。

書影『経済学者のアタマの中』『経済学者のアタマの中』(大竹文雄、筑摩書房)

 朝食を食べられない子どものために学校が朝食を用意する、といった状況をうまく使えば朝食と成績の関係を研究できるかもしれません。

 このように、因果関係には当てはまらない要因がある結果をもたらしている可能性がある場合、それに基づいて政策を立案すると間違った政策になってしまいます。

 政策で重要なことは、何かについて対策をしたときに目標としたことが本当によくなるのか、因果関係の原因に当たる部分を本当に動かせているかどうか、ということです。

 経済学者はその点を何より重視し、因果関係と相関関係との区別を強く意識しています。