勉強をサボる子どもをやる気にさせるためにご褒美を与えることはあるだろう。では、「テストでいい点を取ったらご褒美をあげる」と「本を1冊読んだらご褒美をあげる」の、どちらが子どもの学力向上に効果的なのだろうか?教育経済学者の中室牧子氏が上梓し、シリーズ36万部を突破したベストセラー『「学力」の経済学』(ディスカヴァー携書)より、目からウロコのご褒美術をお届けする。
子どもの学力を上げるのに
効果的なご褒美のタイミング
「テストでよい点を取ればご褒美をあげます」
「本を1冊読んだらご褒美をあげます」
この2つのうち、子どもの学力を上げる効果を持つのはどちらでしょうか。
ご褒美が子どもの出席や学力にどのような因果効果を持つかについて、精力的に研究を行っているのが、ジョン・ベイツ・クラーク賞の受賞者でもある、ハーバード大学のフライヤー教授です。今まで、米国のシカゴ、ダラス、ヒューストン、ニューヨーク、ワシントンDCの5都市で、ご褒美の因果効果を明らかにする実験を行ってきています。
ちなみに、この5都市で行われた実験は、実に9.4億円を使い、約250校、小学2年生から中学3年生までの約3万6000人もの子どもが参加した大規模なものでした。このフライヤー教授の研究を理解するには、子どもの教育成果の分析に用いるもっとも標準的な分析枠組みである「教育生産関数(*)」を知っておくと便利です。これは、別名「インプット・アウトプットアプローチ」とも呼ばれ、授業時間や宿題などの教育上のインプットが、学力などのアウトプットにどのくらい影響しているかを明らかにしようとするものです。
フライヤー教授が実施した実験は、大きく分けると2種類ありました。