
松竹梅のうな丼を見て、つい竹を選んでしまった人は、すでに購買行動を売り手にコントロールされているのかもしれない。サブスクや期間限定セールなどを活用したビジネスが日常にあふれているが、その仕組みを知らなければ余計な出費を重ねてしまうだろう。経済学者が、行動経済学を利用した販売手法のタネを明かす。※本稿は、大竹文雄『経済学者のアタマの中』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
松竹梅を見せられると
なぜか竹を選んでしまう
私たちは何種類かの金額の商品を提示された場合、真ん中の金額の商品を選ぶことが多いのではないでしょうか。これは人間に極端回避性という特性があるためです。
丼ものなど、次のように松竹梅の3種類の値段設定がされていることがよくあります。
松 900円
竹 1200円
梅 1500円
このような価格設定の場合、人は竹の1200円を頼みたくなります。もし900円の商品と1200円の商品の2種類しかなかったら900円の方を選んでいたかもしれないのに、その上の1500円を見せられると、1200円の方を選んでしまうのです。
私たちに判断のよりどころとなるものがはっきりしない場合には、何らかの参照点(編集部注/比較するための基準となる対象)を持ってきて選ぶわけですが、この場合は両側のものを比較対象にして真ん中の選択肢を選ぶという特性が表れています。
これと似たものにおとり効果があります。おとり効果とは、意図的に「魅力のない選択肢」を追加することで、特定の選択肢をより魅力的に見せるものです。