「本当にやりたいことを見つけてビジネスとして形にする、アート型ビジネス」を展開する研究家・山田研太さんと、『「やりたいこと」はなくてもいい。』の著者でストレングスコーチのしずかみちこさん。目標を立てて逆算的に進めるアプローチと、偶然を楽しみ積み上げていく生き方――一見対照的な二人が、それぞれの経験と理論をもとに徹底討論します。果たして、私たちに合うのはどちらの生き方なのか。

しずかみちこ×やまけん対談【後編】「やりたいことは、なくてもいい」――【天才研究】で見えた意外な真実Photo: Adobe Stock

目標設定のスパンはどのくらいがいいのか考えてみる

<やまけん×しずか対談【前編】はこちら

山田研太(以下、山田):人によってどのくらいのスパンの目標設定がいいのか、きっと違いますよね。しずかさんは短期的な目標の方が好きなんですよね? 僕も社会人になって、長期目標を立てるシートを書かされましたが、あまり好きではありませんでした。

しずかみちこ(以下、しずか):はい、私の場合は、3日間でも長いと感じます(笑)。今日一日の目標を決め達成するくらいが一番幸せで、それ以上になるとそこに意味を見出せなくなります。

山田研太:だとすると、長期間にわたる単行本の執筆なんかは大変だったんじゃないですか?

しずか:本の執筆は非常に大変でした。もともと出版社にお声がけいただいたことは何回かあったのですが「書きたいことがないんです」とずっと断っていたんです。今回もいざ書くとなると、8割、9割まで書いては、ぶん投げ、また一から書き直して、というのを3回繰り返しました。決めたゴールに到達するのが嫌なんですよね(笑)。最終的には、編集者さんに書いたもの全部渡して、整理してもらいました。何を書くかを決めるのが嫌なんです。

山田:しずかさんはSNSでも、「よく、こんなこと、こんな角度から考えられるなあ。しかも知識の偏りもやばい! とんでもない能力の無駄遣いだ(笑)」って思うくらい面白い超長文の投稿をしますよね。だから、長文を書くのが得意なのかなと思っていたんですけど、全然違うんですね。書くことを決めずに、その時に書きたい! と思ったことをそのまま表現しているんですね。

しずか:ええ、まさに私は「オタク」なんです。無駄な熱量を、その瞬間に無駄に使い切るんです(笑)。例えば、私は野球は50年近く見ているからいくらでも語れますが、「野球の本を書いて」と言われても気が乗りません。目の前の試合を見た時の心の動きを書きたいだけです。

山田:なるほど。そう考えると僕は「やりたいこと」を仕事にするビジネスをやっていますが、僕自身は、意外と「積上型」で、偶然を積み上げていくタイプかもしれません。人気マンガの「キングダム」には「本能型」と「知略型」の2タイプの武将が登場しますが、それでいうと「本能型」に近いです。自分の直感で「こっちの方が良さそう」な方に進むので、他人に「なんで?」とか「どこ目指してんの?」と聞かれても説明が難しいんです(笑)。

しずか:そうですね。やまけんさんは、実は「やりたいことを見つけない方がいい人」な気がしますね。目標を設定することが「窮屈」だと感じるなら、無理に目標を見つけない方が良いです。自分の体感を無視して目標を作っても、何も良いことはありません。

スケジュール通りにいかないとストレスがたまる人は逆算型?

山田:スケジュール通りにいかないとストレスがたまる、という人は「やりたいことを見つけたほうがいい人」、つまり逆算型ですか?

しずか:それは結構複雑なんです。「スケジュール通りにいかない」こと自体がストレスなのか、それによって「他人に迷惑がかかる」など、別の結果がストレスになっているのか考えてみてください。例えば、私の場合、友達と会う予定でバスが遅れたらストレスになりますが、それは「友達に迷惑がかかる」からです。そうではなく、純粋に「スケジュール通りにいかないこと自体がストレス」なのであれば、「やりたいこと」や「目標」がしっかりあったほうがいいタイプでしょうね。

山田:逆算型が積上型になったり変化することはありますか

しずか:ありますね。目標を今見つける必要がない人の中にも、確実に「積上型」の人と、私が「修行中の逆算型」と呼んでいる人がいます。後者は、本当は目標見つけた方がいいんだけれども、今はまだ自分のレベルが追いついていないので、様々な経験を積む修行をしてから目標を見つけた方がいいタイプです。このタイプなんかは、自分が見える世界が広がるとそこから目標が見えてくる人もいるので、これも変化の一つですよね。そして逆算型の方が効率よく何かを身につけられるのは確かなんですよ。

山田:それは逆算型のすごいメリットですね。僕も、そういった「何かを身に付ける」という文脈だったら逆算型ではありますね。

しずか:効率よく早く身に付けられます。でも効率良さが、それ以外のものを身につける機会を失わせてるってこともあります。

山田:そうですね、視野が狭くなるし、機会もなくなるわけですね。それに集中してしまうから。ちなみに、ストレングスファインダーの34資質でいくと、「積上型」タイプに多いのはどういう資質ですか?

しずか:一番関連が深いのは「適応性」ですね。目の前の状況に柔軟に対応できる「今を生きる」タイプの資質なんですが、ストレングスファインダーを受けたことのある人はこの資質の順位を見てみると面白いかもしれませんね。いずれにしても、自分が目標を決めたほうがワクワクするのか、決めないほうがワクワクできるのか、「自分の感覚」を信じるのが一番です。

山田:僕は「天才研究」をやってるんですが、よく、自己啓発の文脈でイチローの小学校6年生の作文とか使われるじゃないですか。でも実際にいろんな天才を調べると、早くに目標を見つけるタイプのほうが少ないんです。なんとなくやり始めたことがだんだん好きになっていて、展開していくというケースのほうが多い。だから本当に、やりたいことは、あってもなくてもいいんだなと思いますね。

しずか:そうですね。自分のタイプがわかった上で、違うタイプのやり方をアクセント的に取り入れていくのもいいと思います。「積上型」の人でもここぞの時は逆算型の目標志向を取り入れてみたらいいですし、「逆算型」でも人生行き詰まったなとか、最近つまらないなと思ったら「積上型」のやり方を取り入れることで世界が広がって見えてくるものが変わってきます。そのように戦略的に使うことができるようになれば最強ですね。

山田研太(やまだ・けんた)
プロフィール

神戸大学経営学部卒業後、人材教育コンサルの会社に3年間勤務。25歳で起業し株式会社ホンモノを設立。個人事業主を対象にした経営塾は1000名の卒業生を輩出。
2020年より「天才研究」をスタート。凡人が幸せに突き抜ける方法を理論化している。研究の傍、売上よりも個性や美意識を優先し、本当にやりたいことや自分にしかできないことを形にする「アート型ビジネス」という考え方を体系化。その考え方を独自の「論文」形式にまとめて定期的に発表したり、ビジネスの設計構築や実践の場として『天プロ』を主宰。7500人以上が購読する「やまけんの濃ゆいメルマガ」が人気。 https://tenpro.honnmono.com/p/mailmagazine

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の発売を記念して行われた対談から抜粋・編集したものです。