「本当にやりたいことを見つけてビジネスとして形にする、アート型ビジネス」を展開する研究家・山田研太さんと、『「やりたいこと」はなくてもいい。』の著者でストレングスコーチのしずかみちこさん。目標を立てて逆算的に進めるアプローチと、偶然を楽しみ積み上げていく生き方――一見対照的な二人が、それぞれの経験と理論をもとに徹底討論します。果たして、私たちに合うのはどちらの生き方なのか。

しずかみちこ×やまけん対談【前編】「やりたいこと」がなくていい人の特徴とは?Photo: Adobe Stock

やりたいことが見つからない人は、結構、多い

山田研太(以下、山田):しずかさんは、昔から「やりたいことが見つからない」と悩む人や、「目標を決めると息苦しくなる人」が結構な数いると気づいていたんですか?

しずかみちこ(以下、しずか):そうですね。ストレングスコーチという仕事柄、「やりたいことが見つからない」と困っている方にお話を聞くことが多いのですが、そのような方の8割から9割は、実は「無理にやりたいことを見つけない方がいい人」だったりするんです。

山田:なるほど。具体的に、どんな人が「無理にやりたいことを見つけない方がいい」人なのでしょうか?

しずか:たとえば、「5年後に『5年前には、こんなことしてるなんて思ってもいませんでした!』と言うことに喜びを感じる人」ですね。自分の掲げた目標が予定通りに叶うことが「つまらない」と感じてしまう人達です。旅行でいえば、計画をきっちり決めるより、予期せぬ出来事や思いがけない寄り道を楽しめる柔軟性がある人。つい最近も、「万博で電車が止まって帰れなくなる」ということがありましたが、夜中にライブカメラの前で踊ったり組体操したりして、思いがけない状況を楽しんでいる人たちは、きっとこちらにあたりますね。

山田:たしかに(笑)。それとは対照的に、イチロー選手のように、幼い頃から明確な目標を持ち、それを達成することに喜びを感じる人は、「やりたいこと」を見つけた方が良いタイプということですね。旅行もスケジュールをバシッと全部決めて、それをこなすことに達成感を抱くようなら、「やりたいこと」を見つけた方が良いタイプである可能性が高いと。

しずか:その通りです。やりたいことや目標を見つけないことのメリットは、目標に集中して視野が狭まることなく、「偶発性の面白さ」を楽しめることにあるんです。目標を決めると、それに集中してしまい、それ以外のものが目に入らなくなったり、経験する機会を失ったりするので、偶発性が生まれる確率を下げてしまう、というデメリットがあるんです。

「不安を楽しめる自分」を信じられるかどうかもポイント

山田:でも、やりたいことや目標を見つけないままだと、不安を感じる人も多いのではないでしょうか? 「どうすればいいか分からない」という不安はついて回りますよね。

しずか:まさにその通りで、そこが課題ですね。この「不安を楽しめる自分」を信じられるかどうか、もポイントですね。「最初は不安でも、結果的には楽しかった」という経験をたくさん積むと、徐々に「これでもいいんじゃないか」と思えるようになります。

山田:しずかさんはどうして、不安を楽しめるようになったんですか?

しずか:私自身は大学時代にすごく貧乏な生活を経験したことが大きかったですね。当時、青森の大学に通っていたのですが、お金のないときは食べられる野草や道端に落ちているリンゴを食べてしのぎました。その経験から、「最低限これだけあれば死なない」というラインを把握できたし、今でも、日雇いのバイトなどでこのくらい稼げば生きていける、という具体的な数字が分かっているのであまり不安にならないんです。人生全てがネタになると思っていて、不安ですら「美味しい」と感じています(笑)。

山田:なるほど。不安と楽しさのバランスを意識しているというわけではないんですね。

しずか:はい、私自身はバランスを取ろうと思ったことはありません。ただ、セッションではお客様に「『安心』と『楽しい不安』、どちらが欲しいですか」と聞くことがあります。人生において必ずしも楽しさを求める必要もないし、毎日淡々と安心の中で過ごすのも良い生き方だと考えています。やりたいことや目標を持ったほうがいいか、持たないほうがいいかのバランスは、安心と楽しさと、どちらを求めて生きていきたいかに比例するかもしれませんね。

山田研太(やまだ・けんた)
プロフィール

神戸大学経営学部卒業後、人材教育コンサルの会社に3年間勤務。25歳で起業し株式会社ホンモノを設立。個人事業主を対象にした経営塾は1000名の卒業生を輩出。
2020年より「天才研究」をスタート。凡人が幸せに突き抜ける方法を理論化している。研究の傍、売上よりも個性や美意識を優先し、本当にやりたいことや自分にしかできないことを形にする「アート型ビジネス」という考え方を体系化。その考え方を独自の「論文」形式にまとめて定期的に発表したり、ビジネスの設計構築や実践の場として『天プロ』を主宰。7500人以上が購読する「やまけんの濃ゆいメルマガ」が人気。 https://tenpro.honnmono.com/p/mailmagazine

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の発売を記念して行われた対談から抜粋・編集したものです。