「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、本書の内容に関するインタビューを掲載します。(構成:小川晶子)

優秀な人が「やる気を失っていく」組織の特徴・ワースト1Photo: Adobe Stock

――最近は画像や動画などもAIを使って簡単に作ることができるようになっています。これからますます大量生産が可能になり、単価が下がっていく中で、未来にはお金の価値も下がるかもしれません。あまり稼げないし、稼ぐ必要もあまりない、というような。そうなったとき我々は何をモチベーションにして仕事をすればいいのでしょうか?

山口周氏(以下、山口):そもそもお金はモチベーションになりませんよ。これほどパワーが持続しないものはありません。お金をモチベーションに働いている人は、小金を持つとすぐに働かなくなります。
持続するモチベーションは感情に根ざしているものです。面白いとか、喜怒哀楽に通じていることが重要なんです。

「敵と戦う」をモチベーションにする

山口:イーロン・マスクが何故あれだけ大変な思いをしてテスラを経営しているかといえば、化石燃料が嫌いだからです。

スティーブ・ジョブズがなぜ伝説的なテレビCM「1984」(全体主義国家に統治された近未来を描いたジョージ・オーウェルのSF小説『1984』をオマージュしたCMで、アップルが初のマッキントッシュコンピュータを発売した1984年に放映された。広告史に残る傑作と言われている)を作ったのかといえば、個性やクリエイティビティを阻害するシステムが死ぬほど嫌いだからです。

大きなことを成し遂げている人は、だいたいみんな敵と戦っているんです。

――敵と戦うことがモチベーションになるということでしょうか。

山口:「敵がないと、事が出来ぬ」とは勝海舟の言葉です。敵とは必ずしも人のことではありません。イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズがそうであるように、「死ぬほど嫌いなこと」が敵になりますよね。その真逆が、自分に喜びをもたらしてくれるんです。そこを軸にプロジェクトを組み立てれば、長期的に努力を積み重ねられるので、その領域で競争優位になれるでしょう。

――腹の立つこと、死ぬほど嫌いなことは何か考えてみると、モチベーションの源泉が見つかりそうですね。

モチベーションは希少化した資源

山口:現在の社会は、モチベーションという資源が希少化しています。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会人類学教授デヴィッド・グレーバーが『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』を出したのが2018年のことです。グレーバーは、社会に何の価値も生み出していない「ブルシット・ジョブ」が社会に蔓延しており、それらの仕事に携わっている人々の精神が蝕まれていると指摘しました。

同じような指摘をしているリサーチは増えています。社員意識調査の大手、ギャロップ社によると「仕事に対して前向きに取り組んでいる」と答えた人は全世界平均で13%ですし、リクルートの「働く喜び調査」では「働く喜び」を感じていると答えた人は全体の14%です。

――モチベーション高く仕事に取り組めている人は少ないのですね。

山口:その他の調査も含めてまとめると、ざっくり9割の人は「仕事の意味」や「やりがい」を見出せていないことが示唆されているんです。このようにモチベーションは希少化している資源なので、これを獲得・創出できる個人や組織は大きなアドバンテージを持つと言えます。

「待遇がいいだけ」の組織は微妙

――どのような組織が、モチベーションを集めたり高めたりできるのでしょうか。

山口:さまざまな研究結果を踏まえて考えると、モチベーションを集めることに成功し、成長・繁栄し続ける可能性が高いのは「社会的価値の創出」をビジョンとして掲げ、これを実践している組織や企業です。

「社会的価値の創出」をビジョンとしている企業は、組織風土が活性化され、組織の士気が高まるので、長期的に財務パフォーマンスも良い傾向であることがわかっています。

たとえ短期的な業績が良くて給料が高いなど待遇が良かったとしても、その組織が共感できるような社会的ビジョンを掲げていない、あるいは掲げていてもそれを本気で実行しているように思えないのであれば、そのような組織に居続けるのは得策ではありません。ここ20年で、社会・環境面に関する問題意識は確実に高まっています。CSV的な観点はとても重要なんです。

(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)