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パズドラ大ヒットの秘密はビジネスモデルの進化
コンプガチャ後の荒野を再生する家庭用機の精神
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【後編】

石島照代 [ジャーナリスト]
【第39回】 2013年6月14日
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 そこで、「パズドラ」開発者の山本氏(元ハドソン出身)や池尻氏のようなコンシューマー業界育ちの人々の出番である。筆者は15年ほどの業界活動の中で、「自分が作ってくれたゲームを遊んで嬉しそうにしているのを見るだけで、本当にがんばって仕事してよかったと思う」という言葉を、名もなき開発者の皆さんからたくさん聞いた。その言葉を聞くたびに、ゲーム業界の開発者の純粋さに驚いたものである。彼らは「人を喜ばせて儲けるビジネスモデル」を実践していたのだ。ならばもう一度、その気持ちを形にすることから始めることが、業界復活への足がかりになるのではないか。

 彼らは異口同音に「基本無料でゲームの進行にあわせてリニアに課金する、というシステムは工夫次第で可能性があるが、費用対効果のバランスを著しく欠いているコンプガチャは問題」と言っている。つまり、従来のソーシャルゲームの作り手と同じことはしないものの、現在の状況を大変なビジネスチャンスととらえているからだ。

 ある上場系メーカー開発者も「私はソーシャルゲーム肯定派です。自分が業務で『やれ』と言われたら喜んで作ります。売れるとは限りませんけれどもね(笑)」と語る。

 「確かに、我々からすれば『もしもしゲー』などと揶揄されても仕方のない出来のものも多い。2007年頃のガラケーって、もうケータイでゲームビジネスなんかできないんだと思われていたんですよ。それを知っている者からすれば、なんだ打開方法あったじゃないか、何事も知恵次第なんだね、という希望を持って見ています。なにも、コンプガチャがすべてじゃないし、それでダメになる訳じゃないと思います」

 ゲーム業界のビジネスルールメーカーは今まで、任天堂やソニー、マイクロソフトなどのプラットフォーマーだけがなれた。だが、「モニターがあればどこでも遊べる」状況になり、アップルやグーグルなどルールメーカーも増えたことで、開発者側の選択肢は増えている。もっとも、ビジネスになるかどうかは別問題だが。

 山本氏や池尻氏のような、家庭用ゲーム業界が元々持っていたホスピタリティ、つまり「人を喜ばせて儲けるビジネスモデル」を共有する人々によって、コンテンツビジネスの社会的認知を高め、コンプガチャ騒動によって黒く焼け焦げた土地が再生への道のりを辿ることを願っている。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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