SaaS営業にとって重要な
「3つの数字」とは何か
従来の営業職では多くの場合、「顧客の悩みに応じた製品を提案し、契約を締結する」ことがゴールとされてきました。しかし、SaaS営業では、そこはむしろスタートラインです。
契約した顧客が製品を継続的に使い続け、さらに機能追加やプラン変更によって売り上げが伸びていく構造だからこそ、「契約後の世界」を見据えた提案や支援が営業にも求められます。
その中核にあるのが、「3つの数字」です。これらを理解し、日々の営業活動にどう落とし込むかで、成果の出方が大きく変わってきます。
(1) MRR / ARR:契約数より「継続性のある収益」が問われる
MRR(Monthly Recurring Revenue/月間経常収益)とARR(Annual Recurring Revenue/年間経常収益)は、SaaS企業の経営指標として極めて重要です。これらは「今月いくら売ったか」ではなく、「来月以降も安定的に発生し続ける収益がどれだけあるか」を可視化する数字です。
この考え方は、営業の仕事にも直結します。
例えば、1件あたりのMRRが大きくても、顧客の定着率が低ければ事業への貢献度は下がってしまいます。逆に、スモールスタートであっても長期的な利用が見込まれる顧客を多く獲得できれば、営業の成果として高く評価されます。
また、ディスカウントの設計も重要です。
初回提案で値引きを過剰に行うと、MRRが目減りし、LTV(顧客生涯価値)も下がってしまいます。「継続前提の契約」であることを意識し、「この顧客はどれだけ長く利用してくれるか」「アップセルの可能性があるか」を見極めることが、SaaS営業には求められます。
(2)CAC:成果の“質”を決める営業効率の指標
CAC(Customer Acquisition Cost/顧客獲得コスト)は、「1人の顧客を獲得するためにどれだけコストをかけたか」を示す指標です。広告出稿、人件費、営業活動の時間など、あらゆるコストを含めて計算されます。
営業として意識すべきは、「自社のビジネスモデルに合った適切なCACで、成果の出る顧客を獲得できるかどうか」です。
例えば、高単価・エンタープライズ向けのSaaSでは、契約に至るまでの営業プロセスが長期化しがちですが、導入後の継続率が高く、1件あたりの売り上げインパクトも大きいため、一定のCACをかけてでも確実に契約を取ることが求められます。
一方、低価格帯のSaaSでは、ターゲット数が多く、リプレイスも起こりやすいため、CACを抑えながら効率的に数をこなす営業が効果的です。
そのため、がむしゃらに電話や訪問を重ねて件数を追うのではなく、インバウンドマーケティングとの連携やリードのスコアリング、セールステックの活用など、再現性のある手法で効率的に契約を獲得するスキルが重視されます。
転職面接においても、「どれだけ売ったか」だけでなく、「どのようなCACで、どんな営業プロセスを経て成果を出したのか」を語れることが、即戦力として評価されるポイントとなります。