会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

ピーター・ドラッカー、松下幸之助、稲盛和夫…。良い経営書を読むとわかるたった1つのことPhoto: Adobe Stock

「お客さま志向」かどうかは、
経営を成功させる原理原則

 ゴルフをやる場合には、まっすぐ打つ打ち方を最初に学んだほうが上達は早いものです。それが原理原則だからです。

 同様に、経営を実践で行う場合にも、原理原則を学んだほうが、上達が早いことは言うまでもありません。

 私は当社のコンサルタントに「もし、お客さまのところへ行って、会社の見方が分からなかったら、とにかく『お客さま第一かどうかだけ見てくるように』」とよく言います。

 それが、経営の根幹、つまり、最重要の原理原則だからです。

 外部志向か内部志向かを見るという言い方をしてもいいでしょう。ドラッカー先生も「企業の一義的な価値は企業外部にある」とおっしゃっています。

 お客さま志向かどうかが、まず何よりも経営成功のための原理原則です(二義的な価値は「働く人が幸せ」になることだと私は考えています)。

良い経営書を何冊かしっかり読む

 しかし、原理原則はそれだけではありません。

「方向づけ」「資源の最適配分」「人を動かす」を行うのが経営ですが、それぞれに関して、「お客さま第一」を根幹としながらも、多くの原理原則があるのです。

 戦略立案(方向づけ)、会計・財務、経営者の姿勢、人を動かすことなどについて多くの原理原則があります。

 もちろん、この連載でもそれらを詳しく説明していきますが、それを得るためには、それらの原理原則を理解して大成功している経営者や経営コンサルタントの本を読むこともとても大切です。

 お薦めはピーター・ドラッカー先生の本です。ドラッカー先生ほど経営の本質をつかんでいる方は多くはいません。ただ、ドラッカー先生の本は難しい部分も少なくありません。

 それを実践の経営を通して非常に分かりやすく説明しているのがファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんが書かれた『経営者になるためのノート』(PHP研究所)です。

 この本はユニクロの幹部のために書かれたものですが、経営の本質を鋭く突いています。おそらく柳井さんはドラッカー先生の著作をしっかり読んでおられるのだと思います。

 他に、松下幸之助さんや稲盛和夫さんの本ももちろんお薦めです。

 経営コンサルタントの大先輩、一倉定先生の本も本質をついています。私の本だと、もちろん、『[増補改訂版]経営者の教科書』です。

 大切なことは、良い本を何冊かしっかり読んだうえで、「どの本を読んでも書いてある本質は同じだ」と思えるようになることです。

 そうなれば、原理原則を、本当に理解したことになります。そこまで本を読み込んでください。

 そして良い本を何度も読むことが大切で、実践と勉強を繰り返し往復するのです。

 実践だけでも心もとないし、勉強だけではなにも変わりません。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。