会社を伸ばす社長、ダメにする社長、そのわずかな違いとは何か? 中小企業の経営者から厚い信頼を集める人気コンサルタント小宮一慶氏の最新刊[増補改訂版]経営書の教科書』(ダイヤモンド社)は、その30年の経験から「成功する経営者・リーダーになるための考え方と行動」についてまとめた経営論の集大成となる本です。本連載では同書から抜粋して、経営者としての実力を高めるための「正しい努力」や「正しい信念」とは何かについて、お伝えしていきます。

気になった記事をメモする、すごい効果とは?Photo: Adobe Stock

「経済日記」のすごい効果

 気になった新聞記事については、一言でもいいので、手帳などにメモすることをおすすめします。

 そして、それを時々、時間のあるときに読み返し、自分の脳の中のデータベースを活性化しておくのです。

 新聞の切り抜きをたくさんとっている人がいますが、通常は、人間にとって外部データベースは役に立ちません。いつでも役に立つのは、自分の脳の中にあるものだけです。

 その脳のデータベースを常に活性化するために、コンスタントに新聞を読んでインプットし、それをメモして、ときどき見返すのです。

 当社では、毎年、1年のプログラムで後継者ゼミナールを開催しています。ゼミ生たちには「経済日記」を渡し、日経新聞を読んで、毎日日記をつけてもらっています

 自分の仕事や会社に関することのみならず、マクロ経済など、関心を持った記事の要約を書くように指導します(ゼミ生たちは、最初は当然のことながら自分の仕事に近い記事に関心を持ちますが、続けているうちに、もっと大きな経済の動きに関心を持つようになります。世の中の動きが分かるようになるからです)。

 この毎日の日記が、「積み重ね」になります。

 新聞を読んで、何でもいいから世の中の動きをメモしていけば、日記を始めて3日で世の中が分かるとは言いませんが、数カ月もそういう読み方を続けていると、新聞の「読め方」が違ってきます。

 そして、1年、3年、5年とそれを積み重ねている人と、積み重ねていない人では、当然、超えられない差が生まれるのです。

 以前、後継ゼミに参加していたある人が、米国の中小企業団体との交流のため米国に行く機会がありました。その際に開かれたパーティーで、日本の経済状況を現地の人に尋ねられたとき、他の参加者は誰も答えられなかったそうです。

 しかし、彼は後継ゼミに参加してから毎日(卒業してからも)、日本経済新聞を読んで経済日記をつけ続けていたため、日本の景気の動向やGDPが何%くらい成長しているかということを、自分だけ説明することができたそうです。

 正しい努力を積み重ねれば、誰でもある程度の実力はつくものです。

正しい努力を積み重ねれば、
実力はアップする

 ここで説明したような正しい努力を積み重ねていれば、誰でも、世の中の動きが分かるわけです。

 正しい努力とは何かを知り、そしてそれを積み重ねるのです。

 皆さんもダマされたと思って、一面から大きな記事はリード文だけでも読む(電子版なら上から数段落だけでも読む)、そして、それを一日一つだけでもいいので簡単にメモしてときどき見返すということをやってみてください。必ず、能力は高まります。

 とにかく、新聞でも雑誌でも、信頼できる情報なら何でも構いません。

 毎日コンスタントに、そこからの情報を自分にインプットしてください。

 さらには、街を歩いたり、色々な所へ行って、世の中を見るのも実践的な経済学です。そうした正しいインプットを積み重ねることが大事です(もちろん、お客さまの動向を知ることもとても重要です)。

(本稿は[増補改訂版]経営者の教科書 成功するリーダーになるための考え方と行動の一部を抜粋・編集したものです)

小宮一慶(こみや・かずよし)
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO
10数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。
1957年大阪府堺市生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。在職中の84年から2年間、米ダートマス大学タック経営大学院に留学し、MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、91年、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。
94年5月からは日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。2014年より、名古屋大学客員教授。
著書に『社長の教科書』『経営者の教科書』『社長の成功習慣』(以上、ダイヤモンド社)、『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「1秒!」で財務諸表を読む方法』『図解キャッシュフロー経営』(以上、東洋経済新報社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(以上、PHP研究所)等がある。著書は160冊以上。累計発行部数約405万部。