AIでリスク高まる米株市場、投資家は留意をPhoto:CFOTO/gettyimages

 投資家とリスクは奇妙な関係にある。一方では、投資家はリスクを求める。うまくいけば、それが報酬をもたらす。だが他方で、最も避けたいのは全く報われないリスクだ。

 そのため、リスク選好とリスク回避をその都度切り替えることになり、恐怖と強欲、ブームと崩壊という非常によくある振幅が生じる。これは現在の米株市場でも重要な意味を持つ。なぜなら市場は三つの重要な指標でかつてよりリスクが高まっているからだ。

・第一に、現代史の中でも、今の市場は少数銘柄に集中する度合いが非常に高い状態にある。市場に追随する投資家は従来に比べて、個別銘柄に対してはるかに大きなリスクをとっている。

・第二に、市場で支配的な銘柄は、ある一つの賭けに大きく依存する。すなわち生成AI(人工知能)だ。今年はその賭けに約4000億ドル(約59兆円)が投じられる見通しだ。

・第三に、これらの銘柄が驚異的であり、必ず上昇するだろうことで見方が一致し、ある種の集団的思考を生み出している。何らかの挫折に見舞われると、この集団的思考は一瞬にして逆転する可能性がある。

 集中度の高さは十分知られているが、恐ろしいことに変わりはない。S&P500種指数に買いを入れた場合、上位5銘柄が資産ポートフォリオの27.7%を占めることになる。10年前の11.7%に比べて高く、1964年と同水準だ。1964年当時、これは問題ではなかった。好況期でそれ以外の市場も高騰していたため、集中度は徐々に低下した。