
【エルキンズ(米ウェストバージニア州)】タシャ・テイラーさん(33)にとって妊娠は簡単なものではなかった。妊娠した時点で既に、双極性障害の治療のため精神科の薬を服用していた。その後、彼女はこの処方薬が胎児に悪影響を及ぼす可能性があることを知った。
服薬をやめることを決めたが、それによって悪夢にうなされるようになった。虐待的だった元パートナーが夢に現れ、震えながら目を覚ますようになった。食事を取るのも困難になった。
テイラーさんは医療用マリフアナカードを取得した。大麻のおかげで妊娠中も眠れるようになり、躁(そう)状態も抑えられた。寝る前にほんの少しだけ使ったという。彼女は、両親に育てられたエルキンズ南東部の小さな家に住んでおり、自宅から800メートルほど離れた場所に大麻販売店がある。
「神様が地球に与えた植物を使うより、もっと悪いことをしている人は山ほどいる」とテイラーさんは話した。
米国では妊娠中に大麻を使用する女性が増加しており、テイラーさんもその一人だ。多くの女性は処方薬が胎児の健康にどのような影響を与えるかを懸念しており、大麻については痛みやひどい吐き気、不眠などを和らげる安全な手段だと考えている。
「薬物使用と健康に関する全国調査(NSDUH)」のデータの分析によると、妊娠中の大麻使用は近年増加しており、妊娠第1三半期に最も多い。NSDUHのデータによると、2019年の妊婦の大麻使用率は5.4%で、02年の3.5%から上昇した。調査方法の変更により、20年以降の大麻使用率はそれ以前の年とは直接比較できない。

PHOTO: ALYSSA SCHUKAR FOR WSJ
使用増加に対する懸念は公衆衛生当局者の間で広がっている。研究は限定的であるものの、大麻が胎児の脳のごく初期段階の発達を妨げる可能性が近年の科学的知見で示されており、特に高濃度の大麻の場合はリスクが高い。研究の中には、大麻が早産の確率を高め、さらなる合併症を引き起こす可能性も示すものもある。