企業の四半期決算、トランプ氏は廃止を唱えるがPhoto:China News Service/gettyimages

 米国の資本市場で「透明性低下」の動きが勢いを増している。

ドナルド・トランプ大統領は、上場企業に対して四半期ごとの決算報告を義務付ける規則の廃止を主張 している。同氏は15日にSNSへの投稿で、半年ごとの報告で十分との考えを示した。トランプ氏は第1次政権時代でも同じアイデアを主張したが、結局実現しなかった。

 投資家の間では、四半期開示を巡る米証券取引委員会(SEC)の規則変更を求める声は高まっていない。投資家にとって変更が意味するのは、情報を入手する機会が減り、これまでよりもリスクにさらされやすくなるということだ。

 結局のところ、こうした変更に賛同するかどうかは投資家次第であり、そうすべきではない理由は多い。

 適時かつ標準化された財務報告を義務付ける目的は、企業の資本コストを引き下げることにある。他の条件が同じであれば、企業の報告が透明で信頼できるほど、外部の投資家から資金を借り入れたり、資本を調達したりするコストは低くなる。

 黒字企業の赤字転落といったような悪いニュースを、3カ月余計に待ってから知りたい投資家はいない。また、米半導体大手エヌビディアで起きたように、企業を取り巻く状況が急激に変化した場合も、投資家は知っておきたいと思うだろう。

 米国企業の資本コストが歴史的に世界で最低水準にあるのは偶然ではない。

 また、財務報告の頻度が減れば、証券価格のボラティリティー(変動率)が高まることも予想される。情報の更新頻度が減れば、企業が業績を報告するたびに投資家が消化しなければならない情報量は増える。

 しかも、長期間にわたって情報が更新されないからといって、情報が存在しなくなるわけではない。インサイダー(内部者)は情報を持ち、それに基づいて行動するだろう。

 潤沢な調査資金と経営陣への接触機会を持つ機関投資家は、個人投資家に対してさらに大きな優位性を持つ可能性がある。適時の財務報告は、競争条件を公平にする役割を果たす。