【疑問2】将来は予測不能なのに、
長期のローンって怖くない?

 長い期間の借金に対して漠然と不安を抱くのは当然だ。しかし、視点を変えると50年ローンは「安心材料」になりうる。短期間のローンで借りた場合、もし将来収入が減って返済が苦しくなっても、月々の返済額を簡単に減らすことはできない。後から「ローン期間を50年にして返済額を少なくしてください」とお願いしても原則不可能なのだ。一方、50年ローンは最初から余裕を持った返済額でスタートできる。

 そして、もし収入が増えたり、資金に余裕ができたりした時には、いつでも「繰上げ返済」ができる。これにより、返済期間を短くしたり、総返済額を減らしたりすることが可能となる。仮に金利が上がった場合は、運用に回していたお金を繰上げ返済に回す、という選択も可能だ。

 50年ローンは、「いざとなったら50年かけて返せばいい」、そして「繰上げ返済して、借入れ期間を短くしたくなったら自由にしていい」、という消費者(借り手)に有利な選択肢を与えてくれるローンなのだ。

 もう1点、50年ローンの大きな安心材料が、団体信用生命保険(団信)の期間が50年に延びる点だ。団信とは、契約者が亡くなった場合などにローンの残高がチャラになる住宅ローンとセットの保険。つまり超長期の生命保険に加入できているようなもの。万が一のことがあっても家族に大きな負担を残さないという安心感が50年にもわたって、得られる。

「50年もあったら、途中で死ぬかも」などと思うかもしれないが、実は死んだら住宅ローンはチャラになるので、何も心配はしなくていい。

途中で死んだ場合は50年ローンほどトク!途中で死んだ場合は50年ローンほどトク!
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 しかも、死ななないまでも、がんになったら残債がチャラになる「がん団信」が付いた50年ローンもある。ちなみに、国立がん研究センターの「がん情報サービス」によれば、日本人男性が一生のうちにがんに罹患する確率は約62%といわれている。

【疑問3】50年住宅ローンだと
残債割れの可能性が高くなる?

「残債割れ」とは、「ローンが3000万円残っているのに、自宅を売っても2000万円にしかならない」ようなケースのこと。

 これは、ローンの問題というより、「無謀な資金計画」や「残念な物件」を購入した際に起こる問題だ。ローン期間が短くても、物件の価値が下がれば残債割れは起こる。

 大切なのは、無理なく支払える予算で借り入れること。そして、「将来の資産価値」も意識して物件を選ぶことだ。将来の売却も視野に入れ、資産価値の落ちにくい物件を選ぶことが、残債割れを避ける一番の対策となる。

 そして物件価値が落ちにくい、むしろ値上がりが見込める物件は都心部など好立地の高額物件が多いのは、昨今の東京都心のマンション価格高騰のニュースで周知のとおり。毎月20万円の返済(ボーナス払いなし)が可能な世帯の場合、借入可能額(金利0.7%)は35年ローンだと7448万円。それが50年ローンだと1億122万円と、2674万円も多く借入れ可能になる。つまり、首都圏の郊外物件を検討せざるをえなかった世帯でも、将来的な値上がりが期待できる都心部の物件や人気の湾岸部のタワーマンションが候補に入ってくる。

【疑問4】それでも50年間も
住宅ローンに縛られたくない

 50年ローンというと、死ぬまで返済に追われるイメージを抱きがちだ。「新築で買っても50年後にはボロボロかも」と想像する人もいるだろう。

 しかし、前出の好立地物件や人気のタワマンを買えば、数年後に家族構成やライフステージが変わったときに値上がりした自宅を売り、買い替えることも可能だ。買った物件に飽きたり、新たに魅力的な物件が売りに出たりしたら、買い替えてもいい。「50年ローン」は決して「50年間同じ家に住み続け」なければいけないわけではない。

 また繰り返すが、繰上げ返済は自由だ。運用などで資金に余裕ができたら早期に完済してもいいのだ。

【結論】50年住宅ローンは
「賢い」選択肢になりうる

 50年住宅ローンは、単に借金の期間を長くする消極的なローンではない。それは月々の返済額を軽くすることで日々の自由になるお金を創出する。より優れた有利な運用商品を手に入れ、生命保険としての機能も最大化できる。戦略的に利用するなら、極めて合理的な財務戦略なのだ。

 もちろん、50年ローンはローンの不安がゼロになるほど万能ではない。しかし、従来の「ローンは早く完済するのが善」という、デフレ的ともいえる発想から抜け出すことで、候補物件のみならず人生の選択肢を大きく広げてくれる可能性がある。

 なお、インフレの到来を織込むように、日本の長期金利は上昇を開始。2025年9月上旬の日本の長期金利は上昇中で、30年国債の金利は3.2%台にまで上昇している。それに対して住宅金融支援機構が提供する50年固定ローンのフラット50の金利は2025年9月現在、1.99%*と、金利面でも魅力的である。

*住信SBI銀行で、頭金1割超、融資手数料2.2%が必要な商品の場合。